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地域で取り組む脱炭素 ~事例紹介と支援策~
地域で取り組む脱炭素 ~事例紹介と支援策~ 地域で取り組む脱炭素 ~事例紹介と支援策~

【質疑応答】

視聴者から質問に対してライブ配信で登壇いただいた上田康治氏(環境省官房地域脱炭素推進総括官)、山本賢一氏(軽米町長)、坂越健一氏(elDesign株式会社代表取締役社長)にご回答いただきました。(司会進行:吉井綾)

Q 脱炭素の専門人材の育成は?
上田 事業に取り組みながら少しずつでも良いので経験を増やしてほしい。環境省には全国に8カ所の地方環境事務所がありますので、お訪ね、ご相談いただければと思います。さらにOJTではなく人材育成に絞ったプログラムもあります。幾つかの先進的な取り組みをモデル事業化し、その知見を共有するといったものです。そうしたメニューも一緒に見ていただければと思います。
坂越 環境省からの委託事業で全国の3自治体(松山市、唐津市、藤井町)で人材育成事業を行っておりますが、やはり専門性が必要です。ある程度、長期間コミットし、きちんとした知識を身に付けていただくことも大事だと思います。それだけでは不十分だということであれば、一つの町で1人の人材を抱えるのではなく、幾つかの自治体やわれわれのようなところを活用していただき、シェアすることで人材育成へとつながるのではないでしょうか。

Q 太陽光パネルの規制について
上田 三つの視点がありますが、一つは電気事業として参入されている方に対する適切な事業という観点からの規制です。二つ目は設置によるさまざまな安全面・防災面に対する規制対応。三つ目は設置することによって生じる環境面への影響に対する規制です。特に環境面への影響で見ますと、環境影響評価、環境アセスメント制度があります。大規模な公共事業等に対する環境影響を見て、その許認可事業を実施する社に配慮を求めるというものですが、この事業のカテゴリの中に太陽光が20年春から加えられています。法的な規制ではないのですが、環境配慮のガイドラインを作って対応することを行っています。

Q 地域が脱炭素に取り組むためには何から始めれば良いか?
山本 軽米町には大きな製造業などの工場はありませんが、私たちには将来的に町のエネルギー、電気を全て再エネで賄いたいという思いがあります。そのためにも国のさまざまな事業を利用しながら再生可能エネルギーに移行するための働き掛けを、今後もより具体的な形で行っていきたいと思っています。
坂越 まずは自分たちがどれくらいCO2を排出しているかを理解し把握することが必要です。ウルトラCは皆無ですので、一人一人、一社一社が少しずつ進めていくところから取り組んでいきたいと思います。
上田 専門家のアドバイス・評価をしてもらうことが大切です。脱炭素の取り組みには、省エネ、再エネがありますが、省エネのほうは明らかに電力の使用量が下がるので、経営的にもプラスになるような計算ができます。再エネのほうも電力購入契約(PPA)といった新しい業態も出てきましたが、まず自らの状況を把握し、何が経営にプラスになるか、そういう視点でご判断いただければと思います。

Q 軽米町に質問です。新設した課は? また職員の体制や新たにチャレンジしたことは
山本 特に新しい課を設けたわけではありませんが、町としては従来、資源循環型の地域づくりを目指しています。その中で最初に取り組んだのが飼料米で、それをブロイラーや鶏に食べさせ、そのふんはまた田んぼに返す取り組みを行いました。その後、ブロイラーの鶏ふんを使った太陽光発電のFIT制度を通じて資源循環に取り組んでいます。今、再生可能エネルギー推進室を設けていますが、これからは発電・送電から小売まで含めたトータル的な取り組みをするような課を検討していきたいと思います。

Q 広域での地域脱炭素に取り組む上で重要なポイントは?
上田 市町村で連携をしている取り組みについて相談を受けたりしますが、それぞれ組まれている市町村にとって相互にメリットがあることが大切です。合意形成や連携は、やはり一生懸命汗をかいて走り回り、その中心となるような自治体の方がいることが重要だと思います。しかし、そういった関係をゼロから作るのは大変ですから、すでにある連携の中に脱炭素というストーリーが描ければ、多分ゼロから始めるよりは早いのかなという気がします。 山本 軽米町では岩手県北9市町村で作った再エネを横浜市で使っていただくことを進めています。全てを賄うのは難しいですが、9市町村は農林水産業が中心で、また観光にも力を入れていますので、そういった活動を増やしながら横浜市との補完関係を築き、役立っていきたいと思っています。
坂越 基本的にはウィンウィンの関係を作り、お互いのメリットは何かという点をよく話し合うことが必要だと思っています。市町村の境界線は、実はそこに引かれているだけで送電網はそれに関係なく引かれています。まずは近隣の市町村と何ができるかを広域的に考えていくところから始めていただくのがよいのでしょうか。