オンデマンド視聴ページ オンデマンド視聴ページ
地域で取り組む脱炭素 ~事例紹介と支援策~
地域で取り組む脱炭素 ~事例紹介と支援策~ 地域で取り組む脱炭素 ~事例紹介と支援策~

【特別講演】「ESG地域金融促進事業の取り組みについて」小林正彦 氏/株式会社北陸銀行取締役常務執行役員

小林正彦 氏/株式会社北陸銀行取締役常務執行役員

 本日は貴重な発表の機会をいただき誠にありがとうございます。
 まずは、ほくほくフィナンシャルグループ(北陸銀行、北海道銀行など)についてですが、北陸銀行は1877年に加賀前田家から7割の出資を受けて金沢第十二国立銀行として創業し、その後、北陸3県における複数の銀行統合を経て現在の姿となっております。また北海道銀行は戦後復興期の1951年に中小企業者の皆さまから強い要望を受け設立された、まさに道民の銀行です。北前船の時代から北陸3県と北海道の経済的な結び付きが強く、地域的な関係性も深かったこともあり、両行は2004年に経営統合を行い、公益地域金融グループとしてスタートしております。
 北陸銀行は19年4月SDGs宣言以来、本業である金融業を通して地域のお客さまのサステナビリティの取り組みをサポートしています。はじめに環境省支援事業の「ESG地域金融促進事業」における取り組みの一部を紹介させていただきます。
 まずは気候変動の影響、地域への影響・当行のポートフォリオへの影響の観点からアルミ産業を重点分野として特定した上で取引先とのヒアリングを通じ、支援策と今後の対応を検討しました。その上で個別企業ではなくサプライチェーン全体での意識改革が必要ではないかといった気付きを得ることもできました。
 また取引先との「三方良し」の好循環の姿を目指し体制構築に取り組んでおります。具体的には21年5月SDGs評価サービスをスタートしました。これは何から取り組めば良いか分からないというお客さまに対し、自社の現状を把握し課題への取り組みを整理することから社内外に向けたSDGs宣言の策定までお手伝いするものです。大変好評いただいており地域企業の皆さまのSDGs環境への関心がとても高いことを改めて認識いたしました。7月には脱炭素化へ積極的に取り組むお客さまをサポートするファイナンス商品の取り扱いを開始し、戦略の策定から実行に至るまでのお手伝いができる体制構築に取り組んでいるところです。
 富山県内の自治体における脱炭素化の取り組みですが、21年11月株式会社なんとエナジーという地域新電力会社が設立された南砺市は官民で持続可能な町づくりに取り組んでおり、当行も協議会などで連携させていただいております。次に魚津市ですが、魚津の特徴を生かした地域資源の活用によるゼロカーボンシティの実現を目指しており、協議会の委員として引き続き積極的なサポートをしていきたいと考えています。
 最後に地域金融機関として検討している一つの案をお話しいたします。顧客の裾野が広い地域金融機関として自治体とタッグを組み、地域の事業者のCO2排出量の見える化支援を行っていきたいと考えております。地域社会・経済を支えるという共通の使命を有する自治体ともに、地域の事業者の皆さまにサステナブルでレジリエントな地域づくりに貢献してもらいたいと考えております。本日はご清聴ありがとうございました。

【特別講演】「地方特性を活かした実効性のある『脱炭素』施策とは」坂越健一 氏/elDesign株式会社代表取締役社長

坂越健一 氏/elDesign株式会社代表取締役社長

 弊社はエネルギー・環境・経済の視点でエネルギーに関するコンサルティング事業を行っており、長野県富士見町では実際に地域新電力の運営も行っています。  まずは地方行政での「脱炭素」の位置付けですが、脱炭素、は手段の一つであり、それをキーワードとして取り入れた上で、最終的には地域の魅力や質を向上させる将来像を描くことが大切だと思います。そういった意味では脱炭素を目指した施策が必ずしも地域の魅力・質の向上につながっていないこともあります。
 例えば太陽光発電ではFITという形で一般送配電事業者に売電して料金をいただきます。その一部が配当金として発電者、メンテナンス事業者などに支払われるスキームです。ある程度これが地域で循環しているのであればいいのですが、再エネ開発では地域にお金が落ちるのは固定資産税ぐらいという事例も多く、いかに地域を巻き込んでいくかが大事です。
 また、国内の山林等を大事にしながら、そこから出る間伐材などの材料で発電し、得た収益を山に返していくというバイオマス発電のコンセプトは素晴らしいと思います。ですが日本のバイオマス発電事業の多くが輸入材に頼っている、という問題もあります。それでは本末転倒です。
 電力の地産地消をうたう地域新電力は弊社も運営しておりますが、なかなか容易なものではないことをお伝えしたいと思います。例として秋田県鹿角市の第三セクターである小売電気事業者、「かづのパワー」を挙げさせていただきますが、電力市場価格と連動したFIT電気を調達していたため、市場高騰のあおりを受け経営悪化し、残念ながら21 年2 月に事業休止(その後市場高騰リスクを回避する事業モデルを構築し、22年4月からの再開を発表 )をされたと聞いています。本来地域でお金を稼ぎ、循環させるべき地域新電力ですが、ある程度リスクある事業として運営しなくてはいけません。小売電気事業の運営にはある程度専門的知見が必要です。そういったことを踏まえて今後の脱炭素施策を考えていくべきです。
 では具体的にどうすればいいのか? われわれの考えていることをご紹介させていただきます。
 まずは現状認識です。市町村別の再エネ導入ポテンシャルには当然、高い、低いがあり、地域のポテンシャルをきちんと把握して、できること、できないことを考える必要があります。そして地域の特性を生かしたビジョンに脱炭素と幾つかの施策を掛け合わせてプラスに変えていくべきではないでしょうか。
 さらに脱炭素は、一つの地域で完結する話ではなく、先ほど軽米町と横浜市の連携の話もありましたが、地域外との連携を視野に入れていただくなど、市町村の枠にこだわらず、もう少し広域的に捉えることも必要だと思っています。
 最後になりますが、脱炭素は一つのソリューションで実現できるものではありません。2050年ゼロというビジョンに向けて、実際は、少しずつ進めていくことだと思っております。今日はどうもありがとうございました。