【特別講演】「地方特性を活かした実効性のある『脱炭素』施策とは」坂越健一 氏/elDesign株式会社代表取締役社長

弊社はエネルギー・環境・経済の視点でエネルギーに関するコンサルティング事業を行っており、長野県富士見町では実際に地域新電力の運営も行っています。
まずは地方行政での「脱炭素」の位置付けですが、脱炭素、は手段の一つであり、それをキーワードとして取り入れた上で、最終的には地域の魅力や質を向上させる将来像を描くことが大切だと思います。そういった意味では脱炭素を目指した施策が必ずしも地域の魅力・質の向上につながっていないこともあります。
例えば太陽光発電ではFITという形で一般送配電事業者に売電して料金をいただきます。その一部が配当金として発電者、メンテナンス事業者などに支払われるスキームです。ある程度これが地域で循環しているのであればいいのですが、再エネ開発では地域にお金が落ちるのは固定資産税ぐらいという事例も多く、いかに地域を巻き込んでいくかが大事です。
また、国内の山林等を大事にしながら、そこから出る間伐材などの材料で発電し、得た収益を山に返していくというバイオマス発電のコンセプトは素晴らしいと思います。ですが日本のバイオマス発電事業の多くが輸入材に頼っている、という問題もあります。それでは本末転倒です。
電力の地産地消をうたう地域新電力は弊社も運営しておりますが、なかなか容易なものではないことをお伝えしたいと思います。例として秋田県鹿角市の第三セクターである小売電気事業者、「かづのパワー」を挙げさせていただきますが、電力市場価格と連動したFIT電気を調達していたため、市場高騰のあおりを受け経営悪化し、残念ながら21 年2 月に事業休止(その後市場高騰リスクを回避する事業モデルを構築し、22年4月からの再開を発表 )をされたと聞いています。本来地域でお金を稼ぎ、循環させるべき地域新電力ですが、ある程度リスクある事業として運営しなくてはいけません。小売電気事業の運営にはある程度専門的知見が必要です。そういったことを踏まえて今後の脱炭素施策を考えていくべきです。
では具体的にどうすればいいのか? われわれの考えていることをご紹介させていただきます。
まずは現状認識です。市町村別の再エネ導入ポテンシャルには当然、高い、低いがあり、地域のポテンシャルをきちんと把握して、できること、できないことを考える必要があります。そして地域の特性を生かしたビジョンに脱炭素と幾つかの施策を掛け合わせてプラスに変えていくべきではないでしょうか。
さらに脱炭素は、一つの地域で完結する話ではなく、先ほど軽米町と横浜市の連携の話もありましたが、地域外との連携を視野に入れていただくなど、市町村の枠にこだわらず、もう少し広域的に捉えることも必要だと思っています。
最後になりますが、脱炭素は一つのソリューションで実現できるものではありません。2050年ゼロというビジョンに向けて、実際は、少しずつ進めていくことだと思っております。今日はどうもありがとうございました。