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地域で取り組む脱炭素 ~事例紹介と支援策~
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【先進事例】「京都市の地球温暖化対策―『2050ゼロ』への挑戦―」猪田和宏 氏/京都市地球環境・エネルギー担当局長

猪田和宏 氏/京都市地球環境・エネルギー担当局長

 1997年に京都市で開催されたCOP3で京都議定書が採択されました。この開催が大きな契機となり、2004年には全国の自治体で初めてとなる地球温暖化に関する条例を制定し、19年5月のIPCC総会で門川大作市長が全国の自治体に先駆けて2050年ゼロを目指すことを表明しました。
 これまでの取り組みを紹介すると、まずは家電の省エネラベルがあります。家電量販店に行くと省エネ性能を星の数で評価したラベルが冷蔵庫やテレビなどに貼られていますが、京都市発信のものです。また大規模排出事業者を対象にした事業者排出量削減計画書制度の実施や2000平方メートル以上の大規模建築物を新築・増築する場合には再生可能エネルギー施設を設置していただいております。
 こうした取り組みによって、現在、エネルギー消費量はCOP3を開催した1997年から29%削減。ゴミの量もピークである2000年の半分以下の39万トンまで減らすことができております。
 次にCO2ゼロに向けた挑戦についてですが、それまでの温室効果ガス排出量80%以上の削減から2050年ゼロ、30年度までに46%の削減に数値目標を引き上げました。そのためには、市民生活、事業活動、そしてそれらを支えるエネルギー、モビリティをCO2の出ない形に転換していかなければなりません。
 例えば、京都らしい脱炭素ライフスタイルはどういったものかを議論していただく検討チームを立ち上げました。また運輸、産業、業務それぞれ部門ごとに1%、2%、3%と削減目標の取り組みをお願いしていましたが、23年からは目標削減率を2%、4%、6%へと引き上げたいと考えております。モビリティについてもCO2が出ない形に転換していくため「人と公共交通優先の歩いて楽しいまちづくり」として、メインストリートの四条通を4車線から15年に2車線にしました。そして歩道幅を逆に2倍に広げて自動車交通量を4割減らすことができました。車ではなくて人と公共交通を優先するまちづくりを進めるという、ある意味シンボリックな取り組みでもあります。
 最近のお知らせとして、国際的な環境非営利団体である英国のCDPが行っている都市の気候変動対策に関する調査「CDP Cities」において最高評価であるA評価を頂戴いたしました。市民事業者と一緒に行っている取り組み、2050ゼロに向けた京都市としての決意などを評価していただけたと大変うれしく思っております。
 最後に脱炭素の社会の実現についてですが、温暖化対策を実際に行っていただくのは、やはり市民、事業者の皆さまです。同時にCO2を出さない製品、そしてその選択が当たり前になるよう、われわれがしっかりと情報を発信していくことが重要と考えています。市民、事業者の皆さまと危機感と目標を共有し、一緒に取り組みを進めていく、これが京都市の基本姿勢です。ご清聴いただき、ありがとうございました。

【先進事例】「軽米町で取り組む脱炭素推進」山本賢一 氏/岩手県軽米町長

山本賢一 氏/岩手県軽米町長

 軽米町は岩手県の最北端に位置し、東は洋野町、南は久慈市と九戸村、西は二戸市、そして北は青森県八戸市などと隣接しております。基幹産業は農業で、特にブロイラー産業は農業算出額の約5割を占める重要な産業です。2007年度にバイオマスタウン構想、19年度にはバイオマス産業都市構想を公表し、地域資源のバイオマス利活用にも取り組んでいます。
 軽米町は再生可能エネルギーによる発電事業を促進していますが、その理由は、緩やかな丘陵地帯が多く、雨量も年間1000ミリ程度と少なく、日照時間も国内上位にランクし、太陽光発電に適しているからです。またブロイラー産業によるバイオマス用の鶏糞も十分に供給できる状況にあります。
 軽米町再生可能エネルギー推進協議会を14年に設立し、翌年に基本計画を作成しました。その際、協議会として工夫したことが5点あります。まずは再エネを地域発展のツールとして活用するという町の姿勢を示すこと。次に森林保全への配慮や災害防止の観点から町の林野面積の10%を開発行為面積の上限として設定。3点目は生物多様性の確保の観点から太陽光発電においても開発面積が10ヘクタール以上の場合は町独自の環境現況把握調査の実施を義務付けました。さらに売電収入の一部を基金化して農山村振興に必要な財源を確保。そして基本計画策定のための協議会には町民代表として委員を2人公募し、発電事業の導入による景観や生活環境の影響等について協議しました。
 基本計画では、太陽光発電所5カ所とバイオマス発電所1カ所が全て稼働すると事業面積約666ヘクタール、発電規模は213メガワットです。これは一般家庭の年間電力消費量7万4千世帯分に相当し、当町の世帯数の約20倍となります。現在、太陽光発電所4カ所、バイオマス発電所1カ所が稼働しており、最後の1カ所は22年12月に完成予定です。
 そして再生可能エネルギー事業を計画する際に地元貢献の一環として収益の一部を寄付していただく協定書を取り交わしており、収益の一部は軽米町自然のめぐみ基金として積立てております。また施設の工事は、地元の建築会社が関連工事を受注し、関連資材も地元企業から調達していただいており、工事関係者の宿泊や食事、生活用品の買い物といったソフト面でも町内の商店を利用していただいております。このように地域の活性化や経済効果、雇用創出の観点からも脱炭素社会の構築は自治体にとって新たな成長戦略です。100カ所の脱炭素先行地域などの事業を進める際には、ぜひ地方の目線で進めてほしいと思います。当町も世界の一員という自覚の下、公共施設のみならず、全世帯全事業所の電気を再生可能エネルギーにするという、雄大な構想に向かってまい進したいと考えております。
 19年には、横浜市との再生可能エネルギーを通じた連携協定を結びました。21年4月から軽米町の電力が横浜市に供給されていますが、同時に町民や企業などの交流の活性化による地域活性化の創出も期待しています。