iJAMP自治体実務セミナー レポート

新たな物流が地域の課題を解決する〜物流の底力〜

【事例紹介①】「多摩ニュータウンの今後のまちづくりについて」

多摩市副市長 永尾 敏文 氏

◇人口減と空き家

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続いて永尾氏が「多摩ニュータウンの今後のまちづくりについて」というテーマで講演。典型的な都市型高齢化が進む地域で、地方行政の施策がどのように行われているかを説明した。多摩ニュータウンは、ヤマトグループが環境負荷の低減などに向け、他社と協業する一括配送を商業施設以外では初めて実施しており、未来の物流がどうあるべきか、まちづくりの視点からも注目されている。

多摩ニュータウンは東京都多摩市など4市にまたがる東西に長い地域。23区最大の大田区の半分ほどの広さで、居住計画人口は約30万人に上る。都心に人口が集中した昭和40年代以降に建設されたが、近年はさまざまな課題が持ち上がり、多摩市は東京都と都市再生機構(UR)、京王電鉄などの関係各社や学識経験者などとともに、ニュータウン再生のあり方について検討を進めてきた。

課題として、都市インフラの経年劣化、団地の老朽化、近隣センターの機能低下などが顕在化している。住民の高齢化と子供の減少が顕著で、このままでは今後、人口減少の加速と空き家の増加が進む。

永尾氏は「ニュータウンの団地は、例えば5階建てで一つの階段の両脇に10戸ある。この中で2、3軒が空き家になると、防災上も防犯上もリスクが高いまちになる」などと指摘。多摩市は2011年度から調査検討を開始。市民との意見交換をしながら今年3月、市としてのニュータウン再生方針を策定した。

◇循環型の都市構造

多摩市は策定した方針の中で「再活性と持続化によるニュータウン再生」を掲げ、人と環境に優しい都市基盤・拠点構造へ再編、魅力があり住み続けられるまちの実現、循環型の地域サービスを育むまちづくりを目標とした。

再生といっても団地を建て替えれば済む話ではない。「例えば建て替えられたエリアでは子育て世代が流入し、建て替えが遅れ老朽化するエリアでは居住者の高齢化が進み、まちの二極化が予想される。また建て替えに成功しても、途中で世代交代がなければ数十年後に再び現在と同じ課題が出てくる」と永尾氏。「そうならないためには、外から若者や子育て世代を呼び込み、家族の人数やライフステージなどに応じて、ニュータウン内で住み替えができる循環型の都市構造が必要になると考えている」と話した。

具体的には、多様な住まいや子育て支援施設など暮らしを支える機能、就業や交流など新しいライフスタイルを支える機能などの再構成が重要。「都市構造として駅周辺のにぎわい拠点や、地域の核となる拠点も必要で、コンパクトな市街地にしていくべきだ。拠点間の連携強化も図っていかなくてはならない」と訴えた。

多摩市は、コンパクトな都市構造の実現に向けた新たなフレームの導入、再生のムーブメントづくりという大きな方針に沿い、個別方針を明らかにしている。コミュニティー活動や生活を豊かにする取り組みで循環型のサービスを展開するとした個別方針には、高齢者の生活支援、子育て支援などが含まれ、物流との関連も模索されている。

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