◇市全域が試験圃場に
JAフルーツ山梨は、山梨市と甲州市、笛吹市の一部を管内としている。同JAの反田公紀営農指導部長は「農業者が高齢化し、担い手不足といわれているが、私たちのJAでは売り上げが右肩上がりになっている」と、明るい報告をした。2020年度の全農県本部の売り上げは318億円と初めて300億円を超え、その46%をJAフルーツ山梨が占める。貢献しているのは、単価が高いシャインマスカットだ。
さらに後継者問題についても「親が高齢になったので後を継ごうと、東京や京阪神などからUターンしてくる人が増えている」という。そうした追い風の中で農業DXにも力を入れている。
同JAはIoT(モノのインターネット)技術とバイオ技術を活用して課題の解決を図ろうと、山梨市全域を試験圃場(ほじょう)と位置付ける「アグリイノベーションLab」を設立した。実証試験で、果樹では初の取り組みとなるブドウのハウス内環境制御システムを導入。アラートをセットし、スマホに知らせる。ハウスの温度管理が効率化・省力化でき、加湿器の故障などの異常を感知することで、作物への被害も最小限になることなどを報告した。
ブドウの圃場には傾斜地が多い。ホースを上まで持って行き農薬を散布する作業は重労働で、高齢者には危険も伴う。「ドローンを使う散布試験で実績が上がり、重労働の回避につながる」と反田氏は言う。またリモコン式草刈り機により、急な傾斜地での除草作業の大幅な負担軽減が見込めるという。
反田氏は「シャインマスカットは一房3000円もする。消費者が『おいしかったな』と思ってくれる物を作っていくことが生産者に課せられた義務ではないか」と力を込めた。