あいさつした全国農業協同組合中央会(JA全中)の石堂真弘常務理事は新型コロナウイルスの影響について「春の作付けの時期から作業に従事する予定だった外国人実習生が来日できず、多くの地域で労働力不足となって・・・
「地域農業を支える新しい労働力のあり方」をテーマにしたセミナーが11月24日、東京・銀座の時事通信ホールで開かれた。障害者が農作業に従事するメリットに着目した「農福連携」や旅行と農家の手伝いを組み合わせた新しい事業、農業をやってみたい人たちのハードルを下げる取り組みなどが紹介され、農業が成長産業になる可能性を示した。
全国農業協同組合中央会
常務理事 石堂 真弘 様
あいさつした全国農業協同組合中央会(JA全中)の石堂真弘常務理事は新型コロナウイルスの影響について「春の作付けの時期から作業に従事する予定だった外国人実習生が来日できず、多くの地域で労働力不足となって・・・
株式会社日本総合研究所
主席研究員 藻谷 浩介 氏
基調講演した日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は「新型コロナの影響で、コストダウンを図り、大量の物をパーッと出すやり方が限界を迎えている」とし、健康でおいしく、個性的な物を育てた方が高く売れ、長期的・・・
JA共済総合研究所
主席研究員 濱田 健司 氏
身体障害者や知的障害者らが農業生産に従事する動きが、ここ5年ほどの間に広がってきた。この「農福連携」を積極的に推進してきたJA共済総合研究所主席研究員の浜田健司氏は「農業従事者が高齢化し、担い手が減っ・・・
株式会社おてつたび
代表取締役CEO 永岡 里菜 氏
「誰かにとっての特別な地域を創出する」ことを目標に起業したのが、株式会社おてつたびだ。「おてつたび」はお手伝い(仕事)と旅を掛け合わせた造語で、「季節労働」や「出稼ぎ」という言葉をリブランディングした
JA全農労働力支援対策室
専任室長 花木 正夫 氏
農家の仕事は繁忙期と閑散期との差が大きく、収入も異なる。しかし、年間を通じてアルバイトの賃金を保証しないと、なかなか人は集まらない。農作業を手伝うアルバイトを常時つなぎ留める方策はあるのだろうか。・・・
濱田 健司 氏
永岡 里菜 氏
花木 正夫 氏
合瀬 宏毅 氏
<モデレーター>
一般社団法人アグリフューチャージャパン代表理事副理事長 合瀬 宏毅 氏
<パネリスト>
JA共済総合研究所 主席研究員 濱田 健司 氏
株式会社おてつたび 代表取締役CEO 永岡 里菜 氏
JA全農労働力支援対策室 専任室長 花木 正夫 氏
パネルディスカッションでは、取り組み事例を語った3氏が登壇した。浜田氏は「新しい農業の形が見えてきた。大規模化や効率化、スマート化、6次産業化を目指す農業の対極として、教育や福祉、観光などのサービスを・・・
全国農業協同組合中央会
常務理事 石堂 真弘 様
あいさつした全国農業協同組合中央会(JA全中)の石堂真弘常務理事は新型コロナウイルスの影響について「春の作付けの時期から作業に従事する予定だった外国人実習生が来日できず、多くの地域で労働力不足となってしまう事態が生じた」と語った。一方で、リモートワークの定着で地方にいて仕事ができることや働き方改革が副業を推奨している点を挙げて「地方に居を移し、副業として農作業に従事することも現実味を帯びてきた」と指摘。「生産現場の皆さんは大きな不安を抱えていると思うが、新型コロナの教訓を踏まえて、着実に新たな時代の農業、社会を築いていかなければならない」と力を込めた。
株式会社日本総合研究所
主席研究員 藻谷 浩介 氏
基調講演した日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は「新型コロナの影響で、コストダウンを図り、大量の物をパーッと出すやり方が限界を迎えている」とし、健康でおいしく、個性的な物を育てた方が高く売れ、長期的に生き残っていく、と指摘した。農業に限らず、すべての分野で若い人たちの人手が足りない。特に農業では、担い手が圧倒的に65歳以上だという事情がある。藻谷氏は「農業は他産業より20年早く、生産性の増加が迫られている」と述べ、今後10~20年で農業の生産性が上がるとの見通しを示した。
農業統計を見ると、農業の売り上げは増えている。藻谷氏は「『売り上げが減少した後で、少し増加しただけだ』という声もあるが、回復するのはすごいことだ」と話す。果物や卵、牛乳など花卉(かき)以外は売り上げが伸び、米の産出額も伸びている。訪日外国人客(インバウンド)増加の影響も大きい。インバウンドには、値段は高くてもおいしい物を食べたいという欲求がある。藻谷氏は「量はどうでもよい。量は少ないが、売り上げが上がっているのが賢いやり方だ」とする。藻谷氏によれば、農業には四つの伸びしろがある。①肥料や農薬、農機具、冷暖房設備などをなるべく使わないようにすることによるコストダウンの余地②輸入品より価格は高いものの、価値が高い国産品での勝ち残り③担い手の世代交代で生産性とブランドの向上が可能④国内で消費する物は国内で生産する「国消国産」の推進と地域ブランドの確立―だ。藻谷氏が重視するのは、農産物の量的な拡大ではなく、売り上げを増やし、さらに「もうけ」を増やすことだ。ただ、地域活性化のためには、もうけを出すだけでは十分ではない。藻谷氏は「もうけを地域で回す『地域内経済循環』が拡大していかなければならない。農業をてこにした地域活性化を考えてほしい」と訴えた。
JA共済総合研究所
主席研究員 濱田 健司 氏
身体障害者や知的障害者らが農業生産に従事する動きが、ここ5年ほどの間に広がってきた。この「農福連携」を積極的に推進してきたJA共済総合研究所主席研究員の浜田健司氏は「農業従事者が高齢化し、担い手が減っている。一方、障害福祉サービス事業所などの施設にいる障害者は『もっと働く場がほしい。もっと賃金を上げてほしい』と希望している」と話し、働く場が足りない雇用のミスマッチを解決する方策として農福連携に注目した経緯を説明した。三重県松坂市の社会福祉法人では生活介護(訓練)として農作業に従事する事業を始めた。営農継続が困難になったイチゴ農家から「ハウスを引き取ってほしい」と頼まれたことがきっかけ。ハウスを障害者がスタッフと共に組み立て、障害者が機械を操作している。この取り組みがうまくいっている様子を見た周りのイチゴ農家からも「ハウスを借りてくれないか」と打診があった。浜田氏は「農作業に従事したところ、障害者が生き生きとしてきて、障害の状態が改善した。工賃も倍以上に上がった」と言い、「農業がより強くなるために障害者が役割を果たす」と強調した。農福連携に取り組む農家にアンケートを実施したところ、「貴重な人材になった」「経営規模の拡大につながった」などと、反応は上々だったという。
障害者と高齢者、生活保護受給者・生活困窮者らを合計すると、5000万人を超える。その1%が農業に携われば、50万人の労働力が、0.5%であれば25万人の労働力が生まれる計算だ。キーワードは、農産物の対価を得るだけでなく、健康づくりや生きがいづくり、社会参加などを目的とした「ゆるやか農業」、リハビリテーションやレクリエーションのサービスなども提供する「農的活動」だ。浜田氏は「『農福兼業』が生まれてくる。水産業や林業にもつながっていき、食料安全保障や環境保全を支える基盤になっていく」と、広がりへの期待感を示した。
株式会社おてつたび
代表取締役CEO 永岡 里菜 氏
「誰かにとっての特別な地域を創出する」ことを目標に起業したのが、株式会社おてつたびだ。「おてつたび」はお手伝い(仕事)と旅を掛け合わせた造語で、「季節労働」や「出稼ぎ」という言葉をリブランディングした。同社を立ち上げる前に、半年かけて各地を回った代表取締役CEOの永岡里菜氏は「私の出身は三重県尾鷲市だが、全国的にはよく知られていない。しかし、魅力がないわけではない。尾鷲のようにあまり知られていないが、誰かに話し、連れて行きたくなるような、すてきな地域がたくさんある」とし、「その地域では、季節的、短期的な人手不足で困っている農家や事業者などが多い。一方で、地域や農業に興味があり、いろいろな地域へ行き、経験をしたいという若者たちもいる」と話した。
人と人が出会うことによって、人手不足の解消につながるのではないか。永岡氏は、同社の仕組みをウェブ上で若者たちが地域と出会うことができるプラットフォームと位置付けている。旅は費用がネックになることも多い。それが収入を得ることで、行ってみたかった地域を訪れることができる。マッチングの仕組みはこうだ。地域側は仕事の内容や日時、報酬などを記入。旅人側は自分のプロフィルを記入し、関心がある農家や事業所などに申し込む。プロフィルには、出身地や自己紹介、趣味、仕事の経験などが記されている。同社は全く広告や宣伝活動をしていないが、利用者は口コミで広がりつつあり、地域側の満足度は95%、参加者の満足度は98%と高いという。
JA全農労働力支援対策室
専任室長 花木 正夫 氏
農家の仕事は繁忙期と閑散期との差が大きく、収入も異なる。しかし、年間を通じてアルバイトの賃金を保証しないと、なかなか人は集まらない。農作業を手伝うアルバイトを常時つなぎ留める方策はあるのだろうか。JA全農労働力支援対策室専任室長の花木正夫氏は「労働者の目線に立ち、ハードルを下げて、働きたいときに働ける環境を整えることが大事だ」と力説した。
いち早く実践したのが、花木氏が所属していたJA全農おおいただ。農家の依頼を受けたJAが作業に必要な人数や賃金を調整した上で、農作業を請け負うパートナー企業がアルバイトを手配する。現在、大学生や主婦を中心に、約200人のアルバイトが登録されている。収穫作業や選果場でのパック詰めの作業など、作業の内容は年ごとに広がりを見せている。「このままでは、農業があと10年持つとは思えない」と言う花木氏は農業の未来に強い危機感を抱き、「スピード感」を重視する。アルバイトの出勤日数は相談に応じ、柔軟に対応。1日からでもよい。賃金は日払いで、車で農家への送迎もする。「1日働いてみて、自分に合わなければ、次の日から行かなくてもよい。まず農業の現場に来てもらう。農業に関わりやすい環境をつくり、失敗させないことだ」
花木氏は「繁忙期だけ人を雇いたい、というのは農業側の都合だ。閑散期の仕事がなければ探し、つくっていく」と言い、「大分モデル」を全国展開することが自身の使命だ、と強調した。「人のインフラ網」を全国に展開するためには、県域を越える必要がある。既に、九州地区と中四国地区でブロック協議会が発足しており、間もなく他地域にも拡大する。花木氏は「夏場は九州の人材を北海道にもっていき、冬場は北海道の人材を九州にもっていく」という大きなビジョンを描いている。
濱田 健司 氏
永岡 里菜 氏
花木 正夫 氏
合瀬 宏毅 氏
<モデレーター>
一般社団法人アグリフューチャージャパン代表理事副理事長 合瀬 宏毅 氏
<パネリスト>
JA共済総合研究所 主席研究員 濱田 健司 氏
株式会社おてつたび 代表取締役CEO 永岡 里菜 氏
JA全農労働力支援対策室 専任室長 花木 正夫 氏
パネルディスカッションでは、取り組み事例を語った3氏が登壇した。浜田氏は「新しい農業の形が見えてきた。大規模化や効率化、スマート化、6次産業化を目指す農業の対極として、教育や福祉、観光などのサービスを提供して対価を得る農業がある。いろいろな人に体験してもらい、農業に入ってもらう、もう一つの軸が必要だ」とし、モノだけでなくサービスも提供する「農生(のうせい)業」の思想を提起した。永岡氏は「自分が参加したい、やってみたいという『目線』を常に大切にしたい。コロナ禍を通じて農業への関心は高まっている。アフターコロナにおいても、農業に関わる人口を減らさないようにやっていくことが重要だ」と語った。花木氏は農福連携に関し「農作業に従事する障害者を健常者がフォローすることは当たり前だ。『強き者が弱き者を助ける』。それは使命だと考えてほしい」と発言。さらに地域への定住について「一度も行ったことがない所を移住先に選ぶことはない。非正規雇用者が多い若者が賃金を得て長期滞在し、将来的には移住して結婚し、子どもを生んでもらう。そうしないと、農村はよみがえらない」と述べた。
かつての農村では、繁忙期に近所の高齢者が手伝う姿が見られた。花木氏は「農家も、通常の労働力市場の中で手当てしなければいけない状況になったが、まだそれになじんでいない。そこで、作業を請け負うというワンクッションを入れる。慣れてきたら、農家が直接、雇用すればよい」とアドバイスした。のんびりと自由気ままにできるというイメージを農業に抱く人もいるが、実際の農作業は大変だ。永岡氏は「そのギャップをどれだけ埋められるか。研修や就農の前に大変さを知ることが重要ではないか」と述べた。
農業の定着率を向上させるポイントは何か。浜田氏は「農産物の価格をもっと高くする必要がある」と言い切り、「農業法人に勤めて年収200万円程度でやっていけるのか。子育てに加え、親の面倒も見なければならない。売り上げを増やさないと、生活できるだけの給料を払えない」と続けた。永岡氏は、コロナ禍で実習生が来日できなくなった時に、農家から「来てくれるのは外国人がよい。日本人だと作業に耐えられないから」と言われたエピソードを紹介。農家側も、働く側から選ばれる立場だという意識を持ちたい、と指摘した。さらに、農産物の「産地直送」のために、午前3時から働かなければならない例を挙げ、消費者側の意識変革の必要性にも触れた。
浜田氏は「作業を細分化し、見える化し、マニュアル化すれば、作業効率は高まる」と話した。静岡県の法人で、ニンニクの球根を10センチ間隔で埋める作業に携わる障害者がやりやすいように、ひもに赤い印を付けて場所を示したのは、その一例だ。浜田氏は「これは健常者にとっても仕事がしやすくなり、ありがたい」と述べた。花木氏によれば、農作業の状況を改善する場合の基準は明快だ。「自分なら、その仕事をするか。自分がやりたくない事は、他人もやらない」とし、「農協の選果場で、最低賃金でアルバイトを募集している。だが、近くのコンビニの時給より安い。それで、アルバイトが来るのだろうか」と疑問を呈した。大分県は白ネギの産地だ。花木氏は、ほ場(畑)で行う白ネギの根切りを不慣れな日本人が行う場合はクーラーが利いた選果場で行っている例を示し「出来高は下がるが、これが労働者に対する思いやりだ」と強調。さらに「見える化し、研修や訓練を実施した後で雇用契約を結べば、定着率は上がる」と語った。
行政サイドが果たす役割も大きい。花木氏は「パートナー企業への支援」を挙げた。JAグループ側の仕事は、農家と話し、仕事を取ってくること。パートナー企業の仕事は、人を集め、集めた人を管理することだ。花木氏は「パートナー企業は送迎用の車を取得したり、事務所を借りたりしなければならない。1年目、2年目は苦しい。事業が軌道に乗るまでの期間を支援する仕組みをつくってほしい」と要望した。永岡氏は行政に「翻訳者」の役割を期待した。地域側は「人は来てくれないだろう」と最初から諦めムードになる一方で、若者側は「私たちが行っても邪魔になるのではないか」と及び腰になりがちだ。両者を結ぶのがおてつたびの目標だが、それを理解してもらう必要がある。永岡氏は「地域の関係者に、東京のベンチャー企業だと言うと、びっくりされる。行政が翻訳者となってやってくれるとありがたい」と述べた。浜田氏は「中央省庁と自治体の皆さんは頑張っている」とした上で、「真剣にやるのはよいが、深刻にやるのは駄目だ。わくわくする仕事、自分が楽しむ仕事をしてほしい。自分が楽しみ、社会のためにやっていれば、必ず周りにつながる」と強調した。
※LGWAN環境でご覧の方へ※
オンデマンド配信の視聴申込みは下記URLをコピー&ペースト
し、インターネットブラウザに接続してお申し込みください。
https://jiji.smartseminar.jp/public/application/add/1865
オンデマンド配信視聴申込で取得する個人情報は、弊社の内部規則に基づき厳重 に管理いたします。また、弊社の事業における情報提供(広告・宣伝メール、メールマガジンなどを含む)、 営業活動等に利用します。
ご入力いただいたお客様のメールアドレスに視聴用URLの送付先メールアドレスとして利用されます。
オンデマンド配信視聴申込フォーム及びオンデマンド配信ページはインターネット環境にてご視聴ください。