総括
日本の持続可能な食と農について考える
東京農業大学国際食料情報学部国際食農科学科 教授
「食と農」の博物館 副館長
上岡 美保 氏

東京農業大学国際食料情報学部教授の上岡美保氏は食生活の変遷に触れた。「昔は家庭で、ちゃぶ台を囲み、多世代が食事を共にした。当然、和食で、そこにはおふくろさんたちの味、家庭の味があった」と言い、家庭での食生活について「コメなどの穀類、伝統的な調味料のみそやしょうゆの需要が下がっている。野菜、果実、魚介類も減少傾向にある」と指摘した。
◇栄養バランス、和食ベースに
外食と中食を合わせた食の外部化が進み、内食が大きく減少している。教授たちは、福島県のある農村地域の小学5、6年生を対象に60のメニューから「とても好きだ」から「全く好きではない」の5段階に「食べたことがない」を加えた6段階で選んでもらった。結果はすしが1位となったものの、フライドポテト、ピザ、ハンバーガー、グラタンなど「外国籍の食」が人気の上位を占めた。「伝統的な料理をあまり食べていない。これは東京の傾向も同じだ」
食料自給率は1965年に73%だったが、現在は37%にまで低下した。「これは先進国の中で最低のレベルだ。国産国消は困難な状況にある」と言う。
たんぱく質、脂質、炭水化物3大栄養バランス(PFCバランス)の推移」を見ると、たんぱく質の割合はあまり変化がないが、脂質は増え、炭水化物は大きく減った。
「70年代にハンバーグなどの洋食が登場したが、ご飯やみそ汁なども食べていた。PFCバランスは大変素晴らしく、魚から、肉も野菜も果実も食べるといった多様性を持っており、欧米の食の専門家も高く評価していた」

◇伝統的食文化の危機
和食は13年に日本の伝統的な食文化として世界無形文化遺産に登録された。日本型食生活が崩壊すると栄養バランスが保たれないだけではなく、食料自給率もさらに低下するだろう。上岡氏は「現状では、和食は受け継がれているとは言い難い」と危機感を示し、農業と農村が担うさまざまな機能を理解した上で、「地産(国産)がなければ、地消(国消)もない」と強調した。