◇農家つなぎ留める
パネルディスカッションで花木氏は「農家は生産スキルと経営スキルがそろわないとできない。18年には延べ約1万5000人が労働力支援に携わったが、こうしたスキルを習得して就農した人は10人もいないだろう」と、難しさにも触れた。
「農家の労働力不足を補う目的は、現在の農家をやめさせないことにある。仕事がなければ探す。探してなければ、仕事をつくる。キャベツの生産・販売もそうだ」。花木氏は「そこにはリスクがあり、JAが負っている」とし、行政の支援にも期待した。
◇移住希望者と面談
水柿氏は移住に関して「8年間で延べ五十数人が移住してきた。出て行く人たちもいる。ただ、きちんと『仁義』を通して出ていくか、やりっ放しで出ていくかは違う」と述べた。
行政の制度を利用する移住希望者に対しては地区の責任者や移住者の先輩、行政関係者らが面談し、「上山に来て何をしたいのか」尋ねる。一緒に農作業をしたりしながら、地区の医療や教育の実情を地域側が希望者に「ノー」を出すこともあると言う。
◇無理せずに受け入れ
田口氏は「修学旅行で長沼町のグリーンツーリズムを体験した生徒が家族連れで再訪する、という話には驚いた。あまり人を受け入れると、農家が疲弊してしまうのではないか」と指摘。戸川氏は「PRは一切していない。たとえ人数が少なくても受け入れるときは1校だけで、決して無理はしていない」
受け入れた生徒たちには、地元の温泉を割引料金で使うことができるようにした。ジンギスカンも割引で提供している。「行政からの補塡(ほてん)はない」と語り、町を挙げて取り組んでいる点を強調した。