iJAMP 自治体観光セミナー2018 地方空港の活用とリージョナル航空の可能性を考える ~新たな観光ニーズを探りわが街に人を呼び込め!~

パネルディスカッション

リージョナル航空で地域を活性化させる

モデレーター:北海道大学公共政策大学院特任教授 石井 吉春 氏
パネリスト:富士山静岡空港社長 出野 勉 氏
       フジドリームエアラインズ社長 三輪 徳泰 氏
       宮城県土木部次長 金子 潤 氏
       北海道稚内市長 工藤 廣 氏

◇民営化で客数伸び収益も改善

【石井】本日のテーマである地方空港の活用とリージョナル航空の可能性ということだが、最初に地方空港の新たな可能性について問題提起してほしい。

【金子】東日本大震災からの創造的復興という中、宮城県庁は技術分野で公共土木施設等の在り方を手掛けており、空港も取り上げている。仙台空港は2016年7月に国管理空港としては最初の空港民営化をした。空港と関連施設の空港ビルや駐車場、貨物事業などを一体的に運営し、効率的な設備投資を行い、収益の改善を図る取り組みだ。
 民営化の空港は、空港自体の収益の改善と、利便性の向上で、旅客数が大きく伸びている。東北全体の観光などへのビジネスチャンスが拡大していくし、地元にとっては、旅客数の増加により、周囲のまちづくりが進み、ホテルや集客施設の建築などが今後期待される。

◇空港を核とした広域観光

【石井】次に富士山静岡空港の出野さんに伺いたい。リージョナル航空の拠点空港ということ、ゴールデンルートの中でインバウンドの受け入れに努力されていること、上下一体で効率的な運営をされてきたことについて話してほしい。

【出野】静岡空港ができた時点で、設置管理者である県と、ターミナルビルを含めた運営会社である弊社が、どうしたら一体的にやれるかを考え、指定管理制度を設けて、国管理空港とは違う形で一体的運用を進めていくことになった。ターミナルビル会社は、運用の方にはほとんどノータッチなのが一般的な地方空港だが、静岡空港の場合は、指定管理業務の中に空港の運用業務も含むことになっている。
 最終決定権者は設置管理者である県だが、実態上の実務としては、弊社の社員が全部行っていくということで始めた。その中で、例えば低コスト化等の問題だが、県の設置や国管理も単年度予算で、複数年の予算は計上しづらい。だが、包括的な委託契約を結んで低コスト化を図るとか、長期契約による低コスト化などもやってきた。
 これから来年4月以降の運営権事業になった時には、やはり今まで弱かった部分が、資本投下による新しい活性化として、周辺開発も含めて一体的な地域開発が進めていけると思っている。地域のにぎわいづくりのためには、いろんな施設も必要だし、デベロッパーと一体となった地域の活性化を図っていきたい。

【石井】工藤さんからは先ほど、稚内空港の現況として、便数の減少とかの厳しい乗降客の推移の中でここ数年、フジドリームエアラインズ(FDA)との取り組みで、新たな可能性が見えてきているというお話だった。コンセッションによって、どう変わってほしいのかも含め、お話しいただきたい。

【工藤】北海道は7空港が一括して民間に運営を委託していく方向で、最終的には2021年3月1日に移行というスケジュールで動いている。今回のコンセッションもそうだし、地方と地方を結ぶリージョナル航空のリージョナルジェットの導入も地方の活性化の大きな狙いだと受け止めている。
 それぞれの空港を核とした展開ができないものかなと思っている。ぜひ、そうした広域観光の展開が図られてほしい。今回のコンセッションには、フルサービスキャリアではできない、地域と地域を結んだネットワークで全体的な底上げを図っていけるという期待を持っているし、その方向に進んでほしい。

◇飛ばす側と地元が一体で需要開拓

【石井】地方空港にとってのリージョナル航空の可能性や、就航条件をどう整えていくかについて三輪さんに伺いたい。

【三輪】日本には97の空港があり、そのうち、私どもFDAの機体が離発着できる1500メートル以上の滑走路のある空港は75。そこに対して、私どもは定期で16路線、16空港、チャーターで62の空港に経験を持っている。このため、今後どことどこを飛んでいくか、というシティペアの数は相当あると考えている。
 では、その場合の就航条件はどんなものがあるのかというと、定期便なら、やはり一定以上のお客さまの数が予測できる、または、そういった数のお客さまを創出、期待できることが大きな条件になると思う。
 また、滑走路の長さとか、積雪寒冷地ならば除雪体制がどうなっているのかということ。空港の運用時間のほか、私どもは多路線少頻度運航という形でやっているので、混雑空港で待たされると、後ろへどんどんずれてしまう。飛行場の運用時間からみて、最後の便を切らざるを得ない事態も起こってしまう。
 私どもが飛びたい時間は、他のエアラインも飛ばしたい時間なので、どうしてもグラウンドハンドリングが混んでしまい、後から行ったわれわれの機体はなかなか扱ってもらえないことも起こり得る。そこで、航空事業としての全体のコストを下げるという意味もあって、兄弟会社にグラウンドハンドリングをやってもらうことも必要かなと思う。
 鈴与グループにはこれがあって、私どもの機体は自社グループで扱う体制もつくりつつある。やはり、飛ばす側とお使いいただく地元が一体になってお客さまの需要を開拓していくことがポイントだと思う。

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地方同士が直接交流

静岡県副知事 難波 喬司 氏

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観光立国に地方空港の役割大

国土交通大臣 石井 啓一 氏

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国内航空客が1億人突破

国土交通省 航空局 航空ネットワーク部長 久保田 雅晴 氏

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「お客さま満足度日本一」を

富士山静岡空港 社長 出野 勉 氏

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FDAチャーターが回復支える

北海道稚内市長 工藤 廣 氏

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地域間交流で地方を発展させる

フジドリームエアラインズ 会長 鈴木 与平 氏

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【パネルディスカッション】
リージョナル航空で地域を活性化させる

北海道大学 公共政策大学院 特任教授 石井 吉春 氏など