ブランドづくりに成功したロマンチック街道だが、多くの宿泊客を取り込んでいるローテンブルクやノイシュバンシュタイン城観光の起点であるフュッセンのような都市もあれば、日本人がほとんど知らない小さな町もある。パネルディスカッションで西山氏は、「10カ国語くらいのパンフレットが用意され、28の自治体が載っている。財政面でも、人材面でも独自で地名を打ち出すことができない自治体でもPRはできている」と、広域観光圏のメリットを強調。「観光客に来てもらえるかどうかは、自分たちでさらに魅力を発信していけるかにかかっている。全てがおんぶに抱っこ、という感じではない」と付け加えた。
青木氏は2次交通を取り上げ、「これは英国でも大きな課題だ。山の上にあったりするので、レンタカーで行くしかないというのが問題だ」と指摘した。日本でも2次交通の問題は議論になるが、三つの方法があるだろうと提起。「一つはレンタサイクル。無料のレンタサイクルを各スポットに置き、乗り捨てができるような仕組みをつくる。次に規制緩和により、農家の人が観光客を迎えに行けるような仕組みをつくる。3番目が『福祉バス』のようなものだ。観光客のための2次交通ではなく、地域の高齢者が病院に行ったりするための生活者交通を観光と連携させてやっていく」と説明した。
ウェルネスツーリズムが日本であまり知られていないのはどうしてか。岡村氏は「おそらく日本人相手であれば、ウェルネスツーリズムに近いものがたくさん提供されている気がする。日頃やっていることが海外の人から見ると、とても魅力的なプログラムにつながっていることに気付いていないのではないか」と指摘した。シンガポールやタイなどアジアの国々もウェルネスツーリズムに力を入れ始めた。岡村氏は「日本の方がもっと良いプログラムがあるのに、と思うことが多々ある」とした上で、「一から開発する必要はない。既存のさまざまな観光メニューにウェルネスという要素を加え、それを海外の人に分かりやすく説明することだ」と話した。