長崎市の人口は15年から16年にかけて2930人減少した。経済的には約33億円の喪失につながったと推計されている。16年7月に発足した長崎国際観光コンベンション協会の事務局長兼DMO推進本部長の外園秀光氏は「しかし、私たちには四つのチャンスがある。訪日外国人は増加を続け、二つの世界遺産があり、観光立国ショーケースにも選ばれた。間もなく新幹線も開通し、アクセスも向上する」と語った。
この長崎版DMOが目指すのは「人を呼んで栄える街。若い人たちが長崎で働き、長崎を誇りに思い、世界の人々が訪れて来る街」で、訪日外国人、市民、民間事業者の3者がウィンウィンの関係になる「三つのワクワク」をビジョンに掲げる。外園氏はこれを「21世紀の『出島』を目指す」と、簡潔な言葉で表現した。
同市には15年、約73万3000人の外国人が訪れた。ただ、クルーズ船の客が多いこともあって日帰り客が7割を占め、消費額が大きい宿泊者の割合は小さい。延べ宿泊者数は15年に約33万8000人と過去最高を記録したが、京都や福岡、広島などの都市の増加幅には及ばない。国別来訪者を同じ被爆都市の広島と比較すると、広島は消費単価が高い欧米やオーストラリアが6割なのに対し、長崎はアジアが7割弱で欧米豪は3割にすぎない。
外園氏は現状を踏まえ、幾つかの課題を挙げた。まず観光地としての明確なブランドイメージが弱いことで、「日本人にとっては長崎イコール異国情緒だが、外国人が求めているのは日本の文化、日本の日常生活だ」と指摘した。次が「『モノ』『コト』のコンテンツが不足し、来訪者の満足度が全国平均より低いことだ」とした。こうした課題を克服するため、ロゴマークやビジュアルの制作などによるブランドコンセプトの確立や満足度を高める着地型商品や土産物、グルメなどの開発に取り組んでいる。外園氏は「来訪者の目線、事業者の目線、市民の目線で内容を深掘りするような目標を設定し、オール長崎でしっかりやっていきたい」と強調した。