iJAMP自治体実務セミナー レポート

新たな物流が地域の課題を解決する〜物流の底力〜

【基調講演②】「地方創生のための物流とは」

上智大学教授 ヤマトグループ総合研究所専務理事 荒木 勉 氏

◇物流は地方創生の要

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荒木氏は「地方創生のための物流とは」というテーマで基調講演。ヤマトホールディングスは今年9月、愛知県豊田市に総合物流ターミナル「中部ゲートウェイ」を竣工(しゅんこう)。神奈川県内の「厚木ゲートウェイ」や大阪府に来年竣工される「関西ゲートウェイ」で、周辺の人口密集地に対する即日配送が可能と説明した。

しかし、地方ではこの恩恵を受けるのは難しい状況が続いている。荒木氏は、1時間以内に注文した品物が届くアマゾンの会員向けサービスを取り上げ、「都心では世田谷区内だけと思ったら、最近は23区すべてでやり始めた。消費者は自分が買いに行くより早いと考えるかもしれないが、人口密集地以外では不可能なサービスだ」と指摘した。

都会と地方で地域格差を少しでもなくすためには、物流の整備が必要だ。新鮮な野菜や果物、魚介類など日常生活に欠かせない物品だけでない。テレワークが広く普及する時代が来ても、資材が必要な仕事がある限り物流は外せないからだ。「必要な資材の配送が2、3日かかるようでは仕事にはならない。即日もしくは翌日届けられる体制が全国で整えられれば、地方就労は進む」と力を込めた。

また、若者流出など地方の過疎化を防ぐ意味でも、流行のファッションや人気の食品などについて、さらに流通する仕組みづくりが必要と荒木氏は説く。物流の整備は、地方でも楽しく便利な生活を可能にする大きなポイントになる。

◇活力ある市街地構築

インターネット通販が盛んになり便利な世の中になると、トラックの台数が増え、荷さばきのための駐車も増える。排ガス問題だけではなく人通りの邪魔になり安全を損なう恐れもある。きれいなまちづくりの妨げにもなりかねない。

こうした状況が生じる背景について、荒木氏は「ドライバーは遅刻するとペナルティーがあるため、1、2時間前に現場に到着する場合もある。夏はエンジンをかけっ放しでクーラーもかけている。住民が歩きやすいまちづくりのために、駐車スペースや荷さばき場の確保などが必要だ」と提言した。

物流の視点から見たまちづくりの参考として、荒木氏は米ボストンと独ミュンヘンを例示。「ボストンの市街地にはトラックはほとんど走ってない。高速道路は地下化された上、ビルの地下に荷さばき場があるのでトラックは外に出てこないからだ」「ミュンヘンは早朝だけ車両通行ができ、昼間は歩行者天国になる地域がある。歩行者天国で商売をする人たちの荷物受け渡しは、必ず裏の道路を使うことになっている。このため住民の障害にならない。欧州は車社会だが車と人のすみ分けの意識が高い」などと説明した。

共同の宅配便駐車場と荷さばき場がある東京都武蔵野市内の配送センター、地下トラック駐車場が整備されている丸の内のオフィス街など国内事例も紹介。「ネット通販での宅配はもう当たり前。トラックの配送を前提としたまちづくりを、自治体は最初から考えなくてはいけない」と警告した。

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