iJAMP自治体実務セミナー レポート

新たな物流が地域の課題を解決する〜物流の底力〜

【基調講演①】「物流制裁性革命の推進」

国土交通省物流審議官 重田 雅史 氏

◇無駄、ムラ、無理

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重田氏は「物流生産性革命の推進」をテーマに基調講演。日本の物流について「非常に頑張っているが、やはり無駄、ムラ、無理がある。これを乗り越えないとドライバーをはじめとして人手不足の問題は乗り切れない」と強調。具体的な解決方法として2020年度までに生産性を2割程度向上させることを挙げた。

宅配便は年間37億個を取り扱い、国内を飛び交う小口荷物は1日当たり1000万個に上る。ところが約2割は不在通知で再配達になる。再配達がなければ、年間延べ約9万人のドライバーが他の仕事をすることが可能。再配達のためトラックが排出するCO2は、JR山手線内の広さの森が消化する量にほぼ等しいとされる。

無駄、ムラ、無理の視点から改善すべき点を洗い出し、労働生産性向上につなげ経済成長を促すとともに、トラック減少によるCO2削減や安全な住環境などまちづくりにも生かすことが重要だ。重田氏は「労働生産性はさまざまな定義の仕方があるが、私たちの考え方は業務効率×付加価値の結果」と説明。効率や価値を上げる物流についての取り組み6事例を紹介した。

◇一括宅配で排ガス減

重田氏は業務効率化を向上させる取り組みとして、①宅配便の一括配送②旅客鉄道を利用した貨物輸送③小型無人機(ドローン)による荷物配送④AIなどを利用した物流センター高度化―の各事例を取り上げた。

一括配送については、神奈川県藤沢市のパナソニック工場跡地にできた約1000世帯の住宅地内での取り組みを説明した。ヤマト運輸が2016年11月、同市辻堂元町でエコ重視のまちづくりを進める「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン」(藤沢SST)で、宅配8社による荷物を同社がまとめて居住者に届けるサービスを開始。住民がインターネットなどで購入し宅配各社が近隣商業施設からトラックで運んだ商品を、住宅地内の配送センター「ネクストデリバリースクエア」に集約し、ヤマト運輸が一括して自転車や台車で各戸に届けているという。重田氏は「宅地内を走るトラックが減少し、CO2環境に優しく、何よりも安全な住環境ができる。業界全体ではかなりの生産性の向上になる」と話した。

◇ミニモーダルシフト

旅客鉄道を利用した貨物輸送の取り組みも業務効率化の有効なツールだ。ヤマト運輸は2011年、京福電鉄嵐山線を利用した宅配輸送を開始。京都市内の混雑を避けるため、停車する各駅で台車を降ろし、リヤカー付き電動自転車などで集配するサービスで、同業各社も東京や地方で旅客鉄道を利用した貨物輸送の取り組みを進める。佐川急便は北越急行ほくほく線で、またヤマト運輸、佐川急便を含む宅配各社は、東京メトロ有楽町線・東武東上線で実証実験を行った。

「トラック輸送の一部、あるいは幹線区間で鉄道を利用する。鉄道も貨物ではなく旅客を使う点で新しさがあり、『ミニモーダルシフト(輸送手段の転換)』の一種。トラックサイトの負担を減らし、旅客鉄道のサイドビジネスの可能性も広げる」と重田氏。「東京メトロを使えば、都心の渋滞道路からトラックを減らせる。ほくほく線は、乗客が減少する地方路線の輸送力を貨物に活用できないかという試みだ」と説明した。

◇ドローンは離島から

業務効率化の3例目はドローン。政府は早ければ3年以内に、荷物配送可能なレベルまで押し上げることを目標にしている。特に離島をはじめとする島しょ部や中山間地で、市街地が存在しない場所であれば、機体が発着するドローンポートの整備や誘導の精度を高めることで物資輸送も可能になるとの見方だ。2016年2月には徳島県那賀町でドローンを使った生活物資輸送実験を初めて実施。日用品や食品の宅配サービスについて、過疎地での実用化に向けた課題の洗い出しを急いでいる。

4例目に挙げた物流センターの高度化では、AIやIoTの活用がポイント。医療介護など労働集約的な分野では、システム支援によって業務効率を上げていく動きが進むが、物流も例外ではない。

「圏央道周辺にはこの5年間で、大規模な物流施設が80棟ぐらいできているが、建物内部は自動化、IT化されたシステムで成立している」と重田氏。従業員はIoT化された眼鏡形ウエアラブル端末を身に着け、どこから何を取ってどのように入れればいいか指示を受ける。またAI搭載の無人搬送車が、保管棚を自動的に従業員の元に運搬し、作業の補助をするシステムも確立されている。

◇自動運転で付加価値

物流の付加価値を向上させる取り組みとして、重田氏は、①自動運転技術を活用した次世代物流サービスの開発②高度な鮮度保持輸送技術の開発・普及―の2事例を挙げた。

ヤマト運輸とディー・エヌ・エー(DeNA)は2017年3月に荷物保管ボックスを設置した自動運転車両を利用し、指定された時間・場所に宅配便を届けるサービスの実用実験を予定しており、現在使用する車両を製造している。

宅配便は1日1000万個に上るが、その2割は再配達が必要となっているのが現状だ。再配達抑制策として、受け取る人が駅、オフィス、コンビニなどに荷物を取りに行く宅配ロッカーを設置したが、自動運転技術を活用する未来のサービスはこの宅配ロッカーの進化形という。ヤマト運輸が「ロボネコヤマト」とPRするこのサービスについて、重田氏は「24時間配送が可能で、宅配に新たな付加価値が加わる。高い運賃が取れるサービスをつくっていける事例だ」と強調した。

また、鮮度保持輸送技術は政府が推し進める非常に重要なテーマ。コンテナ内に張った高電圧の電極で、殺菌効果のあるオゾンを発生させてカビを抑制するとともに、放電時振動で凍結せずにマイナス2度まで冷却できるという。

コンテナが安価で一般に普及すれば、大量の生鮮品を収穫時と変わらない鮮度で大量輸出することも可能だ。政府はこの技術を生かし、農産物、水産物や加工品の輸出を促進し、2020年度までに1兆円達成を目指している。

◇雇用、税収とリンク

物流の新たな動きについて、重田氏は「地域の雇用、所得、税収などを上げる一つのきっかけ、あるいはその動きにつながる部分もたくさんある。AIを活用した物流センターの広さは3万〜5万平方メートルで、従業員の雇用規模は大体100〜200人。必ずパートを含めた雇用が地域で発生する。今の物流センターは、カフェは当たり前、場合によっては託児所まである。内部は非常にきれいで送迎バスもあり、工場に近い職場環境になっている。幹線道路の整備、道路ネットワークの拡充とともに、物流センターの誘致も地域振興の効果が大きいということで、ファンド、銀行も期待している」と話した。

【基調講演②】「地方創生のための物流とは」 >>

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