iJAMP自治体実務セミナー レポート

観光立国と地方創生 〜日本版DMOが地域を変える〜

パネルディスカッション

コーディネーター

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中村 好明 氏

ジャパンインバウンドソリューションズ代表取締役社長

パネリスト

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村井 嘉浩 氏

宮城県知事

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清野 智 氏

東北観光推進機構会長

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大西 一史 氏

熊本市長

◇最大課題は交流人口拡大

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パネルディスカッション第1部で宮城県知事の村井嘉浩氏は「東北の人口は今後の24年間で27%減少する。人口減少率が一番高いのが東北だ」とした上で、「消費は冷え込む。いかに交流人口を増やすかが最大のテーマだ」と語った。

東日本大震災の後、同県沿岸部の定住人口は約4万人減少した。14年の国民1人当たり消費支出額は約123万円だから、定住人口減少により消費は約492億円低下した計算になる。

「訪日外国人客は1人当たり約15万円使うといわれている。33万人の客に沿岸部に来てもらい、泊まってもらえれば消費低下をカバーできる。難しい数字ではないが、そのためには仕掛けが必要だ」

今年7月1日、仙台空港が国管理空港としては初めて民営化された。村井氏はそのメリットを「空港ビルや滑走路、駐車場、輸出入関連会社などを一体的に管理運営することでコスト低減とサービス効率化が図れる。航空会社との直接交渉ができるようになったし、税金を使わずに設備投資をしてもらえる」と説明した。ピーチ・アビエーションが17年夏から仙台空港を拠点にすることを決定したのも民営化の効果で、利用者の利便性が増す。

◇ターゲット絞れ

次に村井氏が強調したのが、ターゲットを絞った誘客活動だ。最優先は台湾。もともと宮城県を訪れる外国人客の3分の1は台湾人で、親日家、リピーターが多い。14年に台南市台日友好交流協会と同県観光連盟が教育旅行に関する覚書に署名した。誘致実績は15年度は4校から、16年度は予定を含め13校へと伸びた。また、台北市内に現地サポートデスクを設置し、台湾観光市場の情報を収集するなど、誘客に取り組んでいる。

村井氏はビッグデータ活用の重要性にも言及した。観光客がどの県から宮城県に来てどの県に行くのか。日本人は福島県からの移動が多く、外国人の場合は成田空港や東京ディズニーランドのある千葉県、中尊寺などの世界遺産がある岩手県からの移動が多い。村井氏は「中尊寺、安比高原と連携したプロモーションや成田空港からの誘客を強化しなければならない」とし、「20年までの4年間に外国人宿泊者を50万人にすることを目標に頑張っていきたい」と決意を示した。

◇東北一体で売り込む

JR東日本会長を務めた東北観光推進機構会長の清野智氏はJR各社の大型観光キャンペーンであるディスティネーションキャンペーンに言及した。東北新幹線東京―青森間で「はやぶさ」が走りだしたのが11年3月5日。ところが、11日に大震災が発生した。三村申吾青森県知事は、企画していた青森ディスティネーションキャンペーンを実施するべきか迷ったという。清野氏は「村井知事らから『ぜひやってほしい』といわれ、4月29日から開始した。地元にとって大きな効果があった。意気消沈しているときでも、やるべきことはやることが大事だ」と振り返った。

日本全体のインバウンドに占める東北の割合は1%にすぎない。「国内については一生懸命にやったが、インバウンド対策は十分ではなかった」と清野氏は言う。そこで、昨年4月に東北6県知事と新潟県知事による決起集会を仙台で開催。今年8月には東北6県知事らがそろって台湾を訪れ、交流懇談会に参加した。

「台湾にこれだけのメンバーがそろったのは初めてだ。一つの県だけで行くよりまとまって行く方が相手にとっても良いし、迫力がある。今後もこういう形を続け、東北一体で売り込んでいきたい」

◇ストーリーつくれ

外国人旅行者の平均滞在日数は6〜7日。観光庁はこの日数を踏まえ、複数の都道府県にまたがってテーマ性とストーリー性を持った観光地をネットワーク化し、訪日を動機付ける事業に取り組んでいる。その一つに認定されたのが「日本の奥の院・東北探訪ルート」だ。「東北6県全てを1回の旅行で回るのは不可能だ。中尊寺や瑞巌寺、立石寺などの寺を回ってもらったり、古い町並みを回ってもらったりする。桜も3月末から5月初めまで見ることができる。そういうストーリーのある商品をつくっていきたい」

インバウンドの約8割は個人旅行者(FIT)という。彼らはガイドブックや友人から聞いた話、インターネット、ブログなど個別の情報収集により行動する。清野氏はそういった点に触れ「新宿3丁目のゴールデン街(東京)はSNSを通じて有名になり、宮城蔵王キツネ村は台湾人の口コミで広がった。外国人留学生の力も借りながらアピールしていきたい」と語った。

東北6県の15年の訪日外国人宿泊者数は52万人泊。新潟を入れた7県で70万人泊だ。これを20年に150万人泊に引き上げる。清野氏はそんな目標を掲げ「失敗するかもしれないが、考えられることをやっていこう。とにかく動いていこう。観光で東北を元気にしよう」と呼び掛けた。

◇多様な情報発信を

パネルディスカッションでは、どう情報を発信していくかというテーマも取り上げられた。ツイッターのフォロワーが7万人を超えるという大西氏は「情報の受け手は段々、いろいろなルートから選択肢を入手するようになる。発信する側にしても、手軽にツールを使えるようになった」と指摘した。

スマホを持っているのは主に若い人たちだと思われがちだ。しかし、それは思い込みにすぎない、と大西氏は言う。

「熊本地震の時に、私のフォロワーの最高年齢は93歳だった。長崎で70〜80代の活動的シニアを対象に講演したが、6〜7割の人がスマホを使っていた。新しいツールを使い情報を入手している」

大西氏は「私たちは受け手が何によって一番情報を入手しているか、という点に無頓着過ぎた」と述べる一方で、「マルチに情報を発信していく。特に海外に対して効果がおおきいのは、ツイッター、フェイスブックだ」と強調した。

清野氏は外国人留学生を中心に年1回、東北エリアを旅行してもらい、自国の人々に向けてSNSで発信してもらう取り組みなどを紹介。「実際に見たものをその人たちの価値観で発信してもらうことが大事だ」と述べた。

◇総論より各論大事

団体旅行は言ってみれば、「点から点への移動」だった。FITに対して求められるのは「面としてのもてなし」であり、そのためには広域的な連携が必要になる。

村井氏は「一言で言うと、それがうまくいっていないから東北の一人負けだ。東北6県と新潟の知事らが一緒に台湾へプロモーションに行ったが、モデルにしているのはまとまりが良い九州だ」とした上で、FITの増加に対応する重要課題として無料Wi―Fiの整備を挙げた。各自治体などで無料Wi―Fiの種類がバラバラだと、外国人は違う所を訪れる度にID、パスワードを入力しなければならない。村井氏は「一緒にやろうと口だけで言っても、各論ではうまくいかない。一つ一つ具体的につぶしていかなければならない」と力説した。

大西氏も「福岡や鹿児島の市長らから『熊本地震の影響でこちらも観光客が減った。九州の阿蘇山であり、九州の熊本城なのだ』とエールを送ってもらった」というエピソードを披露し、「海外から見ると、九州といっても小さな単位にすぎない。『オール九州』」という単位での売り込みが必要だ」と強調した。

第二部 「2020年に向けたインバウンド公共戦略」〜日本版DMOで地域の伝統文化自然を生かせ!
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