iJAMP自治体実務セミナー レポート

観光立国実現に向けて~訪日外国人を地方に呼び込め~

「訪日外国人を地方に呼び込め!地方の魅力をどう発信するか」


中村 好明 氏

ジャパンインバウンドソリューションズ 代表取締役社長


ハリス・マイケル・ジョン 氏

キャニオンズ代表


ルース・マリー・ジャーマン 氏

ジャーマン・インターナショナルCEO


ブラッド・トウル 氏

田辺市熊野ツーリズムビューロー
プロモーション事業部長

中村氏:前半はパネリストの皆さんに、これまでの取り組みと自己紹介を兼ねて、プレゼンテーションをしていただく。その後、課題と現状について掘り下げ、最後に未来への提言を。きょうのオーディエンスの皆さんにとって、具体的に役に立つ話をお聞きしたいと思う。

マイク氏:私はニュージーランド出身。子どものころから自然の中で遊んでいた。日本に興味を持ったのは13歳のころ。来日前のイメージは、都会と富士山、新幹線、お寺。自然が豊かだという印象はなかったが、実際来てみると素晴らしい山と素晴らしい川があった。1995年に群馬県みなかみ町にたどり着き、ラフティングの仕事を始め、98年に会社をつくった。スタッフは50人で、6割が日本人、4割が外国人。スキースクールも始め、冬のビジネスも拡大している。日本人に加え、年間1万3000人ほどの外国人が訪れる。外国人は冬の方が多いが、夏も増えてきている。

ルース氏:私は日本に住んで29年。日本をグローバル化する会社を経営している。まず、皆さんに、自分の英語力に自信を持っていただきたい。日本人の英語の発音はきれいで分かりやすい。英語が通じないのはネイティブ同士でもよくあること。日本人は言語に対して完璧主義だが、少しハードルを下げて、外国人に話しかけてもらいたい。それから、自分の国、故郷、バックグラウンドに対して、何がいいのかを自覚することが大事だ。そして、それを言語化しないといけない。外国人にどのように良いところを説明、発信するかは、すごく重要なことだ。

ブラッド氏:カナダの出身で、和歌山県田辺市の熊野ツーリズムビューローで働いている。99年に英語講師として来日し、いったん帰国して、再び田辺市に来た。田辺市は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」のエリアに含まれ、ストーリー性があり美しい。2005年に市町村合併があり、新田辺市をどうするかが議論になった際、私に声がかかった。合併前の自治体にはそれぞれやり方があったが、ツーリズムビューローが全体をまとめて、発信することになった。

 取り組みを紹介するが、実は巡礼道が世界遺産登録されたケースは二つしかない。熊野古道とスペインにある巡礼道「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」だ。そこで、共同プロモーションを始めた。共通ウェブサイトとパンフレットを作り、一緒にプレゼンテーションをした。両方を歩くと証明書とピンバッチがもらえる。始まったばかりだが、もう両方歩いた人がいる。幅広く宣伝するのではなく、ターゲットを絞ることが大切だ。

中村氏:ここからは皆さんが抱えている課題、あるいは日本全体の課題を議論していきたい。

マイク氏:人材確保の面で、日本人の若者を地方に引っ張るのは難しい。外国人もビザの関係で難しい場合がある。それから、組織の在り方が大きな課題。自治体の観光課、観光協会、商工会が同じ仕事をしていて、役割分担ができていない。そこがうまくいかないから、ビジョンづくりができない。ターゲットも絞っていないので、プロモーションができず、無駄が多い。

 それから、ニュージーランドは規制が厳しく、ガイドのレベルが高い。ホスピタリティーと安全性が確保できる。日本も付加価値を付ければ、サービスの価格を上げることができると思う。

中村氏:そうすると、スタッフの給料を上げることができる。意欲も高まる。

ルース氏:日本はフェアというのを大切にする。「全部アピールしないとアンフェアじゃないか」みたいな。でも、やはり効率を考えて、捨てる勇気を持たないといけない。それから、観光地で「ノー」の表示ばかり目に入る。土足で畳に上がるなとか、温泉で洗濯をしないとか。外国人は犯人扱いされた気分になる。日本のおもてなしは素晴らしいが、小さな不親切がある。

中村氏:要するに、旅人目線ではなくホスト側の目線になりがちだ。日本人は悪いことや言いにくいことを言わない。だから、こうして外国人目線でずばずば言ってもらった方がいい。オーディエンスの皆さんにとっても価値がある。

ブラッド氏:なるほど。ただ、私はあまり自分から課題を挙げない。事例を出して、話し合って、そこから課題を見つけるようなイメージで仕事をしている。ツーリズムビューローで最初に課題に挙がったのは、名称の統一。田辺市の熊野本宮大社は、英語で「グランド・シュライン」か「グレート・シュライン」か、など。もう一つは通訳と説明。日本の観光案内をそのまま翻訳すると、意味が伝わらない。外国人の目線の翻訳が重要だ。

中村氏:名称の統一だが、日本人の私もほとんどのまちを知らない。駅名も地名も知らない。出張中、バスや電車をどこで乗り換えたらいいのか分からない。地元の人にとっては当たり前のことが、全く当たり前じゃない。外国人目線では、もっと当たり前じゃないと思う。

ルース氏:翻訳についての話だが、英語のウェブサイトは直訳を載せているような感じがする。例えば、英語のネイティブチェックは必ず入れるべきだ。

ブラッド氏:熊野ツーリズムビューローでは、フランス語を話すカナダ人を3カ月雇って、フランス語のサイトを作った。世界遺産の現場行ってもらい、フランス語で理解してもらい、ページにした。スペイン語も同じ。お金をかける価値がある。

マイク氏:その通りだ。ターゲットにするのであれば、努力して、お金かけてやらないと。下手に5〜6か国語にするのではなく、英語だけか、フランス語、スペイン語、中国語だけにした方が、効果が出るのではないか。

中村氏:個人的な意見だが、多言語化するほど、限られたスペースの中で文字は小さくなる。地元の事情で他の言語を足すのはいいが、共通言語としての英語はすごく大事だ。

ブラッド氏:外国人と日本人の両方に情報発信しているが、日本人の観光客は日帰りか一泊旅行が多い。だから隣町との競争になる。しかし、外国人の場合、欧米語に対応すれば長期で滞在してもらえる。地域間で連携した方が、より滞在時間が長くなる。熊野では、行政の壁を壊して仲良くなって、事業が進むようになった。

中村氏:ブラッド氏の今のコメントだが、ぜひ皆さんにメモしてほしい。これは実際に、本当に現場で実感されていることだと思う。

ルース氏:企業に例えると、部門間の連携が取りにくいときがある。そのときは経営企画室に任せる。ある意味でトップダウンだが、名称の統一とか、シミュレーションとかがそう。地域にも経営企画室のような考え方があったらいい。

マイク氏:今話題のDMO(=デスティネーション マーケティング マネジメント オーガニゼーションの略)の話だと思うが、一番重要なのは若者をどれだけ巻き込めるかだ。地位がある人より、やる気ある若者を投入し、国がサポートする仕組みをつくれば、いい組織ができると思う。

中村氏:最近若い首長が増えている。若者が首長になると、若者がUターンで帰ってくる。

マイク氏:それから、地域にいる外国人は資源にできると思う。ブラッド氏もそうだが、英語講師として日本で何年か働いた人は、地域をすごく好きになる。そうした人から外部の視点を教えてもらうことができるし、働いてくれるようになるかもしれない。

中村氏:日本で暮らす外国人や留学生は、自治体の国際交流課との関係はあっても、インバウンドの観光セクションと関わりがないケースがある。

マイク氏:将来、日本の若者は減っていく。20年後は海外から、スタッフを引っ張ってこないといけない。だから、そういうコネクションをつくっていくのがいいと思う。

ルース氏:私は絆という言葉が大好き。先ほどの地域連携の話だが、やはり地域が絆をつくって、一つの目標に向かうべきだ。リピーターの獲得を視野に入れて、海外の人たちとの絆づくりもお願いしたい。

中村氏:ブラッド氏にお尋ねするが、熊野地域に外国人として飛び込んで、苦労はあったのか。

ブラッド氏:日本語が全然分からず、日本語の本を買って一生懸命勉強していた。それから、バリアの話だが、田舎は外国人が嫌いなのではなく、不安がたくさんあるのだと思う。だから、外国人を受け入れるための研修や、おもてなしのツールづくりをしている。

マイク氏:私の会社では、それぞれのお客さんにカスタマイズした情報を提供している。アクティビティーが終わったら、このレストランを紹介しようとか、この辺りの旅館がいいとか。リピート率はかなり高い。みなかみ町のファンが増えている。自分たちだけではなく、やはり地域全体を考えて良くしていかないと、ディスティネーションにはならないと思う。

中村氏:地域連携が結局、自分のためになる。

マイク氏:最終的にはそうだ。リピーターをつくることはすごく重要。特に、今はSNSの時代だから、来た人を必ず満足させて、その人がネットに書き込みたくなるようにする。そうすれば、宣伝費は使わなくて済む。日本のインバウンドを増やすには、それが大事だ。今、口コミ戦略は一番重要ではないか。

中村氏:SNSが日本を変えている。地方に行くと驚くが、若手の観光事業者が県の副知事とフェイスブックでいつもやり取りをしている。若手の市長と地元の大学生が、フェイスブックでつながっていて、議論していることも。日本の地方はこれまで、「長老が偉くて、若者は黙っていろ」みたいなところがあった。それが嫌で都会に若者が出てきていた。今、SNSでその構図が壊され、日本の地方がフラットになってきていると感じる。

ルース氏:外国人はあまり旅館に泊まってないという話があるが、たぶんほとんどの旅館は、(ホテル情報のウェブサイト)「トリップアドバイザー」に載ってないと思う。勝てる要素があるにも関わらず、フィールドにさえ出ていない。SNSをはじめ、いろいろなプラットフォームを活用していただきたいと思う。

ブラッド氏:SNSはすごいが、ポジティブのパワーもネガティブのパワーもある。うまく使わないと、まちのレベルが低く見えてしまう。一人のお客さんの悪い体験が広まり、急にマイナス評価となる恐れもある。そこをちゃんとコントロールせず、「とりあえず、やりましょう」みたいな感じだと問題がある。私のまちでは、皆があまり変わりたくないと思っている。何か名物を作るとか、ブームに乗って観光施策を進めると、長く続かない。その代わり、きちんとまちを理解して、保存して、価値を維持する。熊野がブームに負けないよう我慢して、ルーツを守ったら将来的に価値が生まれる。

中村氏:最後に、会場の皆さんにメッセージ、あるいは提言、ヒントを。

マイク氏:きょうは自治体の方が多いと思うが、組織の在り方を白紙から考えていただきたい。地元の若者を巻き込んでほしい。世界で唯一のユニークなものをつくるべきで、良い組織をしっかりと運営していく形をつくってほしいと思う。

ルース氏:具体的なアイディアが三つある。まず、捨てる勇気。メインポイントを何にするかを考えることは重要だ。もう一つは、現在のウェブ上に英語が載っていれば、ネイティブの方に見てもらっていただきたい。あまり上手ではない英語だと逆効果、イメージダウンになる。最後は、私がよく歩く新橋駅に観光客向けのポスターがたくさんある。ほとんどローマ字がなくて、例えば、東北の地名だけが英語になっていて、あとは全部日本語。外国人は写真が魅力的で行ってみたいと思っているかもしれないが、何も読めないからもったいない。ある程度の英語も入れてほしい。

ブラッド氏:いっぱいあるが、私もとても勉強になった。田辺市のような田舎、小さなまちは、あまり数字にこだわらない方がいいと思う。「何人来た」とか、数字ばかりにフォーカスしていると、自分のまちの魅力がなくなってしまう。一番大事なのは人。もし、(数字を伸ばすことに力を入れるあまり)地域の人が楽しく生活できなくなるのであれば、別にもうしなくてもいい。地域の人が良い生活ができるような地域づくりをしていかないと、取り組みは長持ちしない。数字はその後にくる。だから、数字にこだわるのではなく、人を大事することが大切だ。

中村氏:そうすれば、価値が生まれ、後からマネーが生まれてくる。

ブラッド氏:その通り。人が元気で楽しく生活できると、いいところが増えてくる。お客さんが楽しくなる。働く人も楽しくなる。頑張る雰囲気も出る。観光は地域を元気にする一つのツールだ。(了)

モデレーター 中村 好明 氏

佐賀県生まれ。上智大学出身。
2000年、(株)ドン・キホーテ入社。販売促進、広報、IR、新規事業推進等の担当を経て、2007年より社長室に所属。2008年、ドン・キホーテグループのインバウンド事業推進責任者に就任。2013年、7月より現職。松蔭大学客員教授。

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