iJAMP自治体実務セミナー レポート

観光立国実現に向けて〜訪日外国人を地方に呼び込め〜

「観光と地方創生を結びつける持続的な政策とは〜消費拡大の可能性を日本人の宿泊旅行動向からよむ〜

(株)リクルートライフスタイル じゃらんリサーチセンター センター長 沢登次彦

地方創生を実現して、訪日外国人観光客をリピーターにするためには、国内の観光を取り巻く環境状態を認識するのが早道となる

観光と地方創生を結びつける話をしたい。現状の把握、地域の課題、課題の解決方策の3点構造だ。国内の観光宿泊旅行(統計)から見える今後の課題と、地域を訪れる際に見える課題に対して、どう解決し、クリアしていく必要があるのかをお話しする。

インバウンドは、日本人の国内旅行の行動とニーズに、外国人のリピーター(獲得)や消費を上げるヒントが隠されている。われわれが行っている観光に特化した「じゃらん宿泊旅行調査」を見ると、日本人がどれだけ観光宿泊旅行をしたのかが分かる。全体的に減少している。訪日外国人の動向は非常に良いが、日本人は宿泊を伴う旅行から離れつつある。交通インフラが良くなり、日帰り可能なことも減少理由の一つだ。

日本人は旅行しなくなってきている。理由は正確には分からないが、経済的に行きたくても、行けない人がいること。もう一つは、旅行以外の余暇で楽しめてしまっていることが挙げられる。日本の観光宿泊旅行者の内訳として、若い女性は減少していない。気になるのが50歳以上の人たちの減少だ。推測するに、旅行より将来の自分のための蓄え、老後の蓄えにお金が流れていると考えている。

○観光と地方創生を結びつける持続的な政策

じゃらんリサーチセンターは「じゃらん宿泊旅行調査」を基に、年間50ほどの地域の活性化に取り組んでいる。そこで出た課題の本質は何か。四つあると思う。一つ目は、地域での新しい価値創造や進化が少ないこと。二つ目は、消費につながる受入体制の整備が遅れていること。三つ目は、地域と消費のマッチング、需要の掘り起こし。これは地域だけではなく、観光産業界全体の課題でもある。四つ目は、難しい問題だが、地域が未来に向けて一枚岩になれていないこと。実はこの課題が根っこの部分で非常に大きい。

未来に向けて何をやってくのか、地域の基盤をどうつくっていくのか。地域の人たちの「出るくいを打つ」とか「はしごを外す」とか、実はこうした根っこの部分を変えていくことが大切だ。今がまさに地方創生を行うタイミング。そして、組織の創造。どの組織がこの地域をしっかり経営していくのか。ここの足腰がしっかりすれば、価値をつくり、需要につなげ、消費を生み出し、しっかり回転させ、それによって地域の経済力向上が実現できると考えている。

○地方で大事なのは宿泊施設

観光客にとって、地域で大事なポイントとなるのは宿泊施設だと思う。宿泊する人は百パーセント宿泊施設にチェックインする。ここで地域の情報提供は百パーセントできるはず。今の宿泊施設は自身の施設案内を一生懸命するだけになっている。宿泊施設自体が地域の消費を上げる大切なプレーヤーであることを自覚し、地域の他のプレーヤーと認識を共有することで、地元の旬な情報を提供する。例えば、チェックアウト後、今の時期ならどんな体験ができるのか。今からでも申し込めるのか。こうした情報をしっかり仕入れて、宿泊施設をハブとして提供していく。ここに外国語での情報提供も増やすことができれば、日本人、外国人とも消費が上がっていくだろう。

最後に環境創造。これについては「氷山モデル」というのを意識した方がいい。消費を上げるとか、商品を作るとかは氷山の上部に見える課題だが、実は地域にはメンタルモデルを少し変えないと、なかなか浮上しない氷山の下部の問題が潜んでいる。前例踏襲や、組織が縦割りであったり、新しい挑戦に躊躇があったり、処理型の業務推進であったりと、創造とは正反対の要素が隠れている。氷山の上部、見える形の解決だけではなく、下部構造の変容が持続性のカギ。個人の意識を変えていくことにも挑戦する必要がある。

例として、熊本県南小国町の黒川温泉に起きつつある五つの変化を簡単にお話しする。最初は、(宿泊客が減っているが)「黒川温泉はまだ大丈夫だ」と思っている親世代と、危機感満載の若い世代、この状況を可視化することから変化は始まった。若い青年部は現状と将来を「非常に厳しい」と捉えており、ここから全てのことが動き出した。

「共通認識から階層を超えた対話」。親世代と若い世代の対話はほとんどなかったが、それを真剣にしっかりやる。そこに異業種の人も入れる。こういった対話が生まれ始めたのがステップの2番目。3番目が「多様性が新たな可能性を育てる」ということ。地元だけではなく、都会の人も巻き込んで、その多様性によって黒川の活性化がさまざまに始まり、第2町民制度のようなものが動き始めた。

4番目が、地域で活動を持続的に行うため、中心となる団体をはっきりさせようと、異業種によるNPOを設立し、共創の基盤としての活動が始まったこと。5番目は世代交代。若い世代が非常に力を付け、16年ぶりに町長が交代し、42歳の首長が誕生した。また、史上最年少の女性組合長が旅館組合から生まれた。若い世代に将来を委ねていく必要性があるという意識の変化が、地域全体で起きていった。

(配付資料に)「都市とのコクリ」と書いたが、コクリは「コ・クリエーション」、共創だ。開かれた、変革する地域としての風土、土壌が生まれている。今はそれが住民全体に広がっていくステージになった。メンタルモデルは、観光などに関わる人だけが変わるのではなく、その地域全体の土壌や風土が変わっていくことが非常に重要となる。(了)

沢登 次彦(さわのぼり・つぐひこ)氏

1993年明治大学卒。同年リクルート入社。2002年10月国内旅行事業部、07年4月より現職。観光地のエリアプロデューサーとして地域活性化に携わるかたわら、中央省庁や地方自治体の各種審議委員会委員も務める。

【パネルディスカッション】「訪日外国人を地方に呼び込め!地方の魅力をどう発信するか」 >>

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