iJAMP自治体実務セミナー レポート

観光立国実現に向けて〜訪日外国人を地方に呼び込め〜

「インバウンド新時代に向けた観光政策」

田村明比古 観光庁長官

訪日外国人をいかに取り込むかが、わが国の一つの大きなテーマとなっている。ありきたりではなく、旅行客一人ひとりを満足させるきめの細かい対応を国全体で行う姿勢が求められている。

きょうは観光の現状、政府の取り組み、今後の課題と政策の方向性でお話ししたい。訪日外国人旅行者数は2014年に年間1341万人という史上最高を記録。15年は10月末までに1631万7000人で、前年同期比48.2%増で推移している。年間の合計は1900万人台に達する見込みだ。

インバウンドは非常に好調だが、日本の観光全体で見ると、旅行消費額の84%は(日本人の)国内旅行による消費。日本人の旅行消費額の推移は5年前が20.9兆円。それが、14年には18.9兆円まで、2兆円シュリンク(減少)している。その分をカバーしているのがインバウンドだ。インバウンドの旅行消費額は、14年時点では2.2兆円と全体の1割だが、どんどん増えている。14年に初めて2兆円を超え、15年は既に2.5兆円まで膨れている。

どの国の訪日旅行者数が伸びているのかを見ると、経済成長を遂げて中間層が育ってきた中国、あるいは東南アジアの国々だ。インバウンド需要の伸びも引き続き、中間層の成長が著しい国に期待できる。最近のインバウンドの伸びは、円安の為替レートと極めて強い相関関係にある。14年10月から、消費税免税制度の対象を一般物品から消耗品にも拡大した。消費額の伸びで非常に大きなプラスとなっている。

○政府としての具体的な取組み

観光立国推進閣僚会議は、全大臣が参加する会議で、毎年その省庁がどういう政策に取り組むか、アクション・プログラムにまとめている。主なものを紹介する。若いころから日本のファンになってもらうことが、リピーターになっていただく大きなポイントで、外国からの修学旅行を日本に受け入れている。日本と違って、外国の修学旅行は、現地の学校で生徒と交流するのが主流になっている。これは教育委員会や学校に受け入れていただかないと「訪日教育旅行」というのはなかなか伸びない。

併せてここ2年、いろいろな国のビザ発給要件の緩和を徐々に進めている。例えば、フィリピンは数次ビザを出し、ビザの発給要件の(最長滞在期間を)15日から30日に延ばすこともやっている。効果はてきめんで、旅行者数に反映している。ビザの対応は互いの国の信頼関係の下で行っている。治安当局の努力で、緩和によって日本の治安が著しく悪化しているということはない。

観光産業の強化や消費の拡大に向け、地方の免税店を増やす取り組みを実施している。免税店数は10月1日時点で全国に2万9000店。このうち1万1000店が地方にできている。また、外国からたくさんのお客さんが来ると、空港に航空機の便数が増え、CIQ(税関・出入国管理・検疫)の対応が大変になってくる。入管で長蛇の列ができるが、CIQの所管省庁が係員を増員し、待ち時間を20分以下にする取り組みも行っている。

訪日外国人は東京から富士山を経由し、京都、大阪というような「ゴールデンルート」に集中する。他の地域にも訪問してほしいため、「広域観光周遊ルート」を作って、地方の魅力を知ってもらう施策に取り組んでいる。

○今後の課題と方向性の決定

15年のインバウンドは1900万人台に到達する見込みだが、わが国は人口減少、少子高齢化が進んでいく。地域の定住人口が減っていくとき、観光がどのような効果をもたらすか。定住人口1人が消費する金額は平均125万円くらい。これをカバーするために外国人を連れてくる場合、8〜9人だと大体それをカバーできる。地域の経済成長を維持するには、交流人口を増やすことが非常に重要だ。(旅行観光消費の)生産波及効果も大きい。交通、宿泊、飲食に16.3兆円使われているが、他の産業への波及効果は全体で50兆円にもなる。先進国などと比べると、日本の観光がGDPに占める割合はまだ少ない。これを高める余地がある。

観光を成長戦略の柱の一つとしてやっていくのは重要なことだが、課題も非常に多い。「2020年、インバウンド2000万人」という目標を掲げてきた。その実現がある程度視野に入ってきたところで、次にどこを目指すのかを考える必要がある。

○日本の観光資源を最大に活用

日本が置かれている状況を考えると、近隣に中間層の成長著しい国が控えている。しかも、わが国には北から南まで多様で奥深い観光資源がある。次のステップに行くためには、これからも増え続ける外国人観光客の満足度を落とさず、リピーターになっていただけるような魅力あふれる国づくりをすべきだ。

総理を議長とする会議も立ち上げた。中長期的な視点でビジョンや戦略を作っていこうとしている。その中での議論は極めて多様で、具体的には景観、まちづくり、インフラ、交通網の充実にも及ぶ。宿泊業の育成・強化や、外国人と日常生活で普通に共存できるよう、国民の意識も変えていく必要がある。文化財、伝統工芸などを保存し、見せていく技も身に付けなければいけない。極めて幅広い議論がなされると思うが、次のステージに向けて、国を挙げて対応していきたいと考えている。(了)

田村 明比古(たむら・あきひこ)氏

東京都出身。1980年東京大学卒。同年運輸省(現・国土交通省)入省、2000年6月運輸政策局旅行振興課長、08年7月〜11年国土交通省官房審議官(国土計画・国際、鉄道局)、11年8月鉄道局次長、12年9月航空局長などを経て、15年9月より現職。

【基調講演】「海外目線で見た日本の観光資源」 >>

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