iJAMP自治体実務セミナー レポート

インバウンド大作戦〜観光戦略と地方創生〜

「インバウンドと観光の付加価値化〜ハラル対策で地域観光にビジネスチャンス」

(株)ブランド総合研究所 代表取締役社長 田中 章雄 氏

○東南アジアからの訪日客の現状

現在、東南アジアからの訪日客が非常に増えており、2016年には200万人程度になると予想されています。その中で特に増加しているのは、インドネシアとマレーシアの二つの国です。なぜ伸びているかといいますと、ビザの緩和、LCCの導入、さらに、国自体が急激に成長していることがあります。こういった状況の中、非常に大きな問題がでてきています。何かといいますと、インドネシアやマレーシアには、多くのイスラム教徒、ムスリムの方がいることです。イスラム教徒は、豚は食べてはいけない、あるいはアルコールを飲んではいけないなどのルールがあります。ところが、残念ながら、日本ではその対応ができていません。今、東南アジアの訪日客がどんどん増えていますが、ムスリムの方々はどうしているかというと、日本に来ても食べるものがないので、素泊まりをしています。そして、自分たちで弁当を持ってきたり、自国で買ってきたインスタントラーメン食べたり、我慢するといったことさえあります。外で食事をする場合は、カレー屋さんなどのイスラム教の方々がやっているお店で食べる程度です。そうすると、どうしても滞在日数が短くなってしまうという問題点があります。それからお土産も買えません。せっかく訪日客が増えても、買えない、食べられない、ということですから、当然、訪日したムスリムの方を満足させることができていないのです。

○ハラルの市場

イスラム教徒は東南アジアだけで2億4000万人いますが、世界全体だと、2010年は16億人、2015年には18億人程度になると推測されております。世界の人口の4人に1人がイスラム教徒になりますので、今後のインバウンドを考える上で、ムスリム対策、つまりハラル対策は不可欠です。現在、在日のムスリムは、日本人を合わせての15万人程度います。この人たちの食の市場は、540億円程度になります。また、訪日したムスリムは、一昨年で35万人、今年は50万人超えていると思いますので、その食の市場は25億円程度になります。それから宿泊、お土産に関して、他国の人たちと同様に消費したとすれば約100億円になります。つまり、訪日したムスリムだけで125億円の市場があるわけです。それ以外の市場もあわせて考えると、合計約900億円以上がハラルの市場があるわけですが、今は残念ながら日本では、ハラル対応した商品がほとんどありませんので、まだ顕在化していない、潜在的な市場となっています。

○ハラルとは

私どもがハラルジャパン協会をつくったのが3年前になりますが、その当時多くの方はハラルという言葉を知りませんでした。それが、今では、特にビジネスマンには、ハラルということを知らない人はほとんどいないくらい有名になってきました。では、ハラルとは何かと言いますと、イスラム教の教えに基づく合法的なもの、という意味です。では、違法は何かといいますと、ハラムといいます。ハラルとハラムでは、わかりにくいので、最近では、ハラムはノンハラルといわれることの方が多いです。ハラルとは何かということですが、宗教の世界は非常に難しく、国や宗派、人によって解釈が違います。ですから、ハラルの認定員というのは沢山いますが、その人によって違うということを覚えておいてください。基本的には、豚肉、糞尿、血液、アルコール、それからイスラム式で屠殺されなかった肉は禁止されています。また、ハラルであってもノンハラルと混ざってしまったらいけません。ただし、ハラルには明確な定義があるわけではありませんので、汚いもの、危険なもの、人に危害を与えるものがノンハラルだと考えていただければいいと思います。

今後は、食品だけでなく各地の空港や観光施設などにもハラル対応をしていかなければなりません。

○今後のハラル対応

需要は急増するものの、どのようにすればいいだろうというのが最大の悩みです。その中で、成田空港は注目です。成田空港には、ハラルレストランというものがあり、専用のキッチンがあります。また、お祈りのスペースやケータリングもおこなっております。非常にハラル対応が進んでいて、素晴らしく、地方のハラル対応の最大のヒントになると思っています。まだ、日本には、万能なハラル認証がありませんし、認証を受けた商品も十分に普及していません。もしかすると、厳密なハラル対応というのは難しいかもしれません。しかし、日本に来ているムスリムたちは、ある程度緩和されています。ですので、彼らが安心でき、自らで判断できる情報を提供できるような仕組みをつくれればいいと思います。今後は、ハラル対策を受身でやるのか、それともインバウンド戦略の一つとして活用していくのかということが重要になってくると思います。そういった時に、色々と難しいことがあるから無理だとは思わずに、他の地域と協力しておこない、ハラル工業団地という形をつくる、成田空港のような既にハラル対応できているところと交流するなどの方法によってハラル対策を進めていけば、それほど難しい話ではないと思います。皆さんも是非、今必要になってきているハラル対応をおこない、急増する海外旅行客に対応していただければ、各地域のインバウンドも良くなっていくと思います。

田中 章雄(たなか・あきお)氏

東京工業大学理学部卒業。
日経BP社で雑誌記者、新雑誌・新事業開発を約20年間担当。2005年にブランド総合研究所を設立し、代表取締役社長に就任。2008年に地域ブランドおよび地域団体商標の普及・啓蒙活動により「知財功労賞経済産業大臣表彰」を受賞。2011年にギネス世界記録地域活性化委員会副委員長、2012年9月に一般社団法人ハラールジャパン協会副理事長に就任。

【パネルディスカッション】「地域から見た観光戦略」 >>

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