◇「新3K農業」を提唱
日本農業情報システム協会の渡邊智之代表理事は「スマート農業」の普及に取り組んできた。渡邊氏は「農業は素晴らしい職業だ。それを、もっと儲かる職業にできないか。農業者の高齢化をデジタル技術だけで担うのは難しく、農業を魅力ある職業にしていかなければならない。試行錯誤や創意工夫が収益に反映されていない状況を打破したい」
「かっこよく、稼げて、感動があるものに!」。渡邊氏が提唱するのは、デジタル技術による「新3K」の農業だ。農業経営には、気候の変化や害虫の発生などのリスクが伴う。渡辺氏はスマート農業について「営農のリスクを最低限にし、最大限の収入を得ると同時に、事業承継にも役立つ」と位置付けた。
年々、経営面積が大規模化する中で「危険と勘による農業」は困難になっていく。スマート農業を支えるのは、センサーによる遠隔監視や全地球測位システム(GPS)による農機の自動制御、スマホやタブレットによる作業管理、販売時点情報管理(POS)による販売管理―などだ。さらに、収穫や除草、田植え、見回りなどを行う各種の作業ロボットに加え、スマホで遠隔操作ができるスマート水門、女性や高齢者の農作業を助けるアシストスーツなど技術の進歩は目覚ましい。
渡邊氏はこれらを紹介した上で「ITをフルに活用して効率化するのは当たり前だ。それに加えて5年後、10年後の自分の農業の姿を意識した経営ビジョンが不可欠だ」と訴えた。