◇野菜中心のテーマパーク
トークセッションで、埼玉県深谷市産業ブランド推進室の福嶋隆宏室長補佐は「アグリテックの集積都市、農業版のシリコンバレーを目指したい」と語った。企業を呼び込むためのコンテストを実施、ふるさと納税を原資として総額1000万円の賞金を出している。22年には花園インターチェンジ(IC)に隣接する30ヘクタール弱の広大な敷地に産業拠点を整備し、年間650万人の来訪者を見込む。
福嶋氏は「野菜を楽しめる街づくりを進め、街全体を野菜を中心としたテーマパークにする」と抱負を述べた上で、「農業を体験してもらいファンをつくり、リピーターになってもらう。リアルがあってデジタルが生きる」と語った。同市関係者の姿勢は「現場志向」だ。「振り向いてくれる企業があれば、私たちが農家との間に入り、現場まで付き添う。行政でも『営業』をする」と、福嶋氏は言う。
![]() 深谷市産業ブランド推進室 室長補佐 福嶋 隆宏 氏 |
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高橋氏は「農業DXは生産面に集中し過ぎているのではないか。かけたコストに見合う価格で売れなければ、農業は続かない。ここを置き去りにして生産性を上げる議論をしたところで、画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く」と問題提起。その上で「DXをしてまで、なぜ農地を守り、農業を続けたいのか。どういう価値を守りたいのか。それを伝えないと、『ドローンを使って作っている作物』というだけでは人の心を打たない」と指摘した。
![]() 株式会社ポケットマルシェ 代表取締役 高橋 博之 氏 |
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反田氏は「シャインマスカットは非常に光を必要とする品種だ。品種の特性に応じた適切な栽培管理によって品質向上を図り、消費者の期待を裏切らない品質のものを生産していく」とし、土壌成分のデータ化などにも取り組む意向を示した。
![]() JAフルーツ山梨 営農指導部長 反田 公紀 氏 |
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◇消費者の心打つ物を提供
農水省デジタル政策推進チームの荒木智行チーム長は「消費者の心を打ち、共感される物を提供していくことで国産の農畜産物が選ばれる。生産者が求めるものは何か、経営の課題は何かを意識しながら、デジタル技術、農業DXをいかに広げるかを考えていきたい」と話した。
![]() 農林水産省 大臣官房デジタル戦略グループ デジタル政策推進チーム チーム長 荒木 智行 氏 |
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最後に、モデレーターを務めたAgVenture Labの荻野浩輝・代表理事理事長が「生産者に寄り添い、消費者と連携する。そこまで農業DXの手を伸ばしていく。自治体やJAなどいろいろな立場の人がいるが、生産者や消費者も含めて皆でやっていかなければならない。生産者、消費者まで目を行き届かせながら活動していきたい」とし、農業DXと国消国産の今後の展開を総括した。
![]() 一般社団法人AgVenture Lab 代表理事理事長 荻野 浩輝 氏 |
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