実践例紹介(1)食育/地産地消
地場産野菜を給食に
JA東京むさし小平支店 指導経済課長
本多 真道 氏

JA東京むさし小平支店指導経済課長の本多真道氏は「給食現場へ畑からまっしぐら」と題し、東京都小平市が進めている学校給食の取り組みを紹介した。
同市の学校給食市場の対象は、市内小学校18校の生徒約1万人だ。JAでは以前から「あすを担う子どもたちに地元でできた良い野菜を食べてもらいたい」(本多氏)という強い思いがあったが、ネックは価格や配送、品質などだったという。そこで同市は2009年度から、給食食材における地場農産物の利用に応じて各小学校へ補助金を交付する「小学校給食地場産農産物利用促進事業」を始めた。15~17年度は、補助率5分の1で生徒1人当たり600円を補助した。
価格以外の課題もあった。学校側が信頼感を持つことが何より大切だからだ。そこで、配送や受注、出荷調整、請求、精算はJAで一括して担うことで農家側の負担を軽減し、生産に集中してもらうことにした。学校側に対しては重点品目を設定し、次期シーズンの出荷状況に関する情報を提供した。さらに、品質をどう保つのかという問題もあった。子どもたちの食を預かる栄養士たちの目は厳しい。そこで、JA関係者が栄養士会に出席したり、「目合わせ会」という会合を設け、調理する側と農家との意見の摺り合わせを行ったりした。

◇農家も積極的に参加
「カレーの日」などのイベントも実施。インフルエンザなどで学級閉鎖という急な事態が起これば、JAが買い取り、他の販路を探すことで農家が安心して生産できる体制を構築していった。そのほか出荷組合を組織していないことも特徴だ。市内の農家であれば、誰にでも声を掛ける。最初は「そんなのは面倒くさい」と言っていた農家も、どんどん積極的に参加するようになったという。
このようにさまざまな課題をクリアにしたことで、学校給食における市内産農産物導入率の目標30%まで、あと一歩と迫った。本多氏は「納品時間を厳守し、欠品は不可という大変な点もある。しかし、給食の食べ残しも減っており、全ては子どもたちのためだ」と力を込めた。