農業の現場から
農は 食を育み 人を育て 文化育成する
全国農協青年組織協議会 参与
飯野 芳彦 氏

全国農協青年組織協議会参与の飯野芳彦氏は埼玉県川越市で、都市近郊農業を営んでいる。枝豆やトウモロコシ、ニンジン、ホウレンソウなどを栽培している。武蔵野の大地は関東ローム層といい、痩せた土地だった。江戸時代に開墾が始まり、人々の長年の努力によって農業ができるようにしてきた。
◇農地を次の世代へ
「美しい棚田の風景を見て、『自然は美しいな』と思うのは勘違いだ。それは自然本来の環境ではなく、人の努力でつくられた『人工環境』だということを理解してほしい」
その上で飯野氏は「田や畑は人工でありながら、自然との共存・共栄を図らなければならない。その手段が自助・共助による『協同』」だ。例えば、日本国内の40万キロにも及ぶ農業用水路の管理を協同が支えている」と強調した。
飯野氏はカロリーベースで37%にとどまっている食料自給率について「災害保険に例えれば、1000万円の保険に入っていて370万円しか補償されないということだ。食料危機が起きるときは日本だけではなく、世界的に起きる。その有事の際に世界の国々は日本を助けてはくれない」と指摘した。

飯野氏によれば、自給率は60%程度、悪くても50%程度を目指すべきだという。飯野氏は「そのためには、週に4回のパン食を3回に減らし、1回分をご飯にするといった少しの『不便』を国民が受け入れてほしい」と述べ、「食料安保は政府だけではなく、すべての国民が考えなくてはならないテーマだ。ぜひ、『美しい不自然』を子や孫の世代に引き継いでいこう」と呼び掛けた。