札幌丘珠空港は札幌市の中心部から約6キロに位置し、全国で唯一の陸上自衛隊との共用。滑走路の全長は1500メートル、就航路線は13往復(夏期15往復)の小さな地方空港だ。冬期以外はジェット機が就航しているが、かつてはジェット化をめぐって大きな議論がなされた。1995年ごろ、国産の YS―11型機の後継機としてボーイング737―500の導入を検討していた丘珠空港の打診を受け、市の行政懇談会は滑走路を延伸してジェット化を推進する方針を公表。地元説明会を開始したが住民から猛反対され、ジェット化をいったん断念した。
 しかし、経済人や道議・市議らで構成する丘珠研究会は、丘珠空港の条件でも一部のジェット機は就航可能で、早期ジェット化は北海道経済立て直しの切り札になると考え、シンポジウムや提言を行った。その後に具体的な検討が始まり、フジドリームエアラインズ(FDA)による検証やチャーター便運航などを経て、2016年度にジェット機による静岡路線の定期便が就航した。着実に段階を踏む中、地域住民の考え方もポジティブなものに変わった。
 空港の有効活用に関し、後追いする形で北海道、札幌市も取り組みを始めた。静岡便就航を受け、札幌市長が冬期のジェット就航に向けた滑走路延長の検討を表明。その後、北海道知事と札幌市長が空港の利活用促進に向けた検討・協議で合意し、約2年後の18年2月に報告書を公表した。報告書は議論のベースとなる情報をケーススタディーとして提供したものだった。その中で、丘珠空港の役割として六つ挙げ、その役割の推進に資する21の具体策を提示した。
 18年度には空港周辺での住民説明会、市民1万人アンケート、学識者らで構成する関係者会議をそれぞれ行い、意見聴取した。住民説明会では否定的な意見が出る一方、ジェット機の飛行が日常化していたことから肯定的な意見も多かった。関係者会議では、利活用策は軽微なものからすぐに進め、またサイレントマジョリティーからの意見も取り上げるべきだとの助言がなされた。アンケートでは、利活用に関心がある市民が多いことがわかり、特に医療拠点としての活用や防災機能の強化、滑走路の延長も進めるべきだとの回答が多かった。

◇インバウンド取り込み、医療・防災にも貢献

 最後に、さらなる利活用について話す。まずはインバウンド。北海道に来た外国人の数は17年までの6年間で約5倍となった。多くは新千歳空港から入り、札幌市を中心に道央圏で観光・宿泊する。丘珠空港を拠点とした道内周遊観光を促進すれば、札幌に偏在する観光客を道内や就航先の地方に分散できる。
 丘珠空港は医療従事者や通院目的の利用者が多い。医師会からは、冬場の安定した移動や医療ジェット運航のため、滑走路の延伸について要望が寄せられている。また、大型台風で陸路が寸断された際、空港を利用して利便性に気づき、そのままユーザーになった人も多い。北海道胆振東部地震の際は、自家発電により通常運航を継続し、交通機能の確保にも貢献した。交通機関・交通施設の被災を念頭に、路線の維持・拡大が望まれている。
 ビジネスジェット機の発着数は新千歳空港が急激に伸びている。しかし、同空港は定期便で混み合うため、ビジネスジェットが希望時間の枠を得るのは難しい。丘珠空港で補完できるとよい。また、苫小牧市が表明している統合型リゾート誘致が成功すれば、ビジネスジェットの需要増に結び付くと期待している。
 以上述べてきた考えの実現に向け、今年度は「丘珠空港の将来像(案)」を作成。来年度以降、将来像を取りまとめるために説明会を実施し、議論を行っていく予定だ。

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