最新治療情報②

骨粗しょう症に伴う骨折とその低減に向けた様々な取り組み

一般社団法人日本骨粗鬆症学会理事長

宗圓 聰 氏
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 ここ10年くらいで要介護・要支援を引き起こす原因の中で増加しているのは骨粗しょう症と認知症だ。増加している原因への対策が重要で、日本を含めた先進国では原因の4分の1は運動器疾患だ。原因の一つである骨粗しょう症は、骨の強度が低下して骨折しやすくなる骨格疾患。その骨の強度の7割は骨密度によって規定される。骨密度を上げるのが予防で最も重要になる。

 骨粗しょう症に伴う骨折を脆弱(ぜいじゃく)性骨折という。立位や座位からの転倒・転落で、ベースに骨強度の低下がある。典型的な場所は、椎体骨折(背骨)と大腿(だいたい)骨近位部骨折(足の付け根)、橈骨遠位端骨折(手首)、上腕骨近位部骨折(腕の付け根)の4カ所。椎体骨折は外傷がからむ確率が小さく、骨の強度が落ちて少しず骨がつつぶれていく。症状も出ないので分からないが、座高が減っていく状態になる。

 それ以外は95%以上、外傷がからむ。このため転倒予防が非常に重要となる。

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◆ 5年生存率50%

 骨折頻度が一番高いのは椎体骨折で、50歳以降に右肩上がりになる。閉経を迎えた女性は骨代謝に関連するエストロゲンが急激に減少し、骨密度が下がる。閉経からあまり時間をおかずにチェックが必要で、背骨の骨折を予防できれば、後は簡単だ。

 カナダの2州で一時、骨粗しょう症の領域に入る人に無料で椎体骨折が抑えられる薬を配った。この薬は、大腿骨近位部骨折を直接抑制する能力はないが、大腿部近位部骨折が減った。椎体骨折を抑えられれば、その先の骨折を抑制できる。

 より高齢で起こる、死亡率が高いのが大腿部近位部骨折。女性の場合、60歳を過ぎてリスクが出始め、70歳以降に急激にそれが大きくなる。つえなしで歩けていた人が、骨折して手術したのち最終的にどうなるか。屋外歩行ができるのは半分しかいない。

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◆ リスクが高いのは骨折経験者

 骨が折れたらお金もかかる。特に介護に関する費用は、寝たきりになると、おばあちゃんの世話のため仕事を休む費用なども含め、べらぼうに増える。医療費、介護費だけでなく、家族へのしわ寄せも非常に大きい。大腿部近位部骨折の発生率を少しでも減らせれば、医療費の低減にもつながる。

 骨折の危険因子で最もリスクが高いのは、既に骨折した経験がある人。骨が折れると次の骨折リスクが上がる。1年後がピークと言われていたが、骨折直後から次の骨折リスクを見ると1カ月後がピークだった。4カ月以降は横ばい。骨粗しょう症性による骨折をみつけたら、次の骨折を予防するため、すぐに介入しなくてはまずいと言える。

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◆ 骨折リエゾンサービス

 大腿骨近位部骨折を起こした人の半分は、もともと骨折がある人。骨折がある人は数が少なく、この人に介入、予防をすると効率が良い。骨密度が低いだけのひとに介入・予防をしても、母数が多くて発生頻度が少ないため効率が悪い。

 効率が良いほうがいい。骨粗しょう症性骨折で入院した患者に骨折予防の介入をする骨折リエゾンサービス(FLS)がイギリスで2000年ごろ始まった。

 看護師さんにインセンティブも与える制度で、うまく回っている。アメリカでもカナダでも行われており、治療率、治療継続率が上がり、骨折も減る。非常によい制度。骨折を一回にとどめ、次の骨折を起こさないようがんばるのが国際的な動きだ。

 日本の大腿骨近位部骨折の患者数は2012年で17万6000件。患者数はこれから世界中で増える。寿命が延びるためだ。

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◆ 低い治療率

 大腿骨近位部骨折は、欧米の多くの国で発生頻度が減少しているが、日本は2012年以降も2015年までまったく減っていない。理由はよく分からないが、日本の薬物治療の治療率はどうか。20%を超えていると思うが、EU平均の43%よりもはるかに低い。治療継続率も海外より低い。

 骨折があるにもかかわらず、治療薬による治療率が低く、継続率も低い。これらの向上のため、日本骨粗しょう症学会が最初に行ったのは、ガイドラインの薬物治療開始基準の改定だった。

 骨折がなくて、骨密度が骨粗しょう症の一歩手前の人たちで大腿骨近位部骨折の家族歴があるか、FRAX(世界保健機関が開発した骨折リスク評価ツール)で10年間の骨折確率15%以上の人に介入する考えを出した。

◆ カットオフ値で介入

 FRAXは骨密度を入力しなくても骨折確率が出る。国際的には骨粗しょう症の介入基準は今、FRAXが主流。日本は骨粗しょう症の検診率はやたら低いが、検診の見直しに向けた厚生労働省の第1回班会議で「FRAXにしよう」という意見が大半を占めた。FRAXでリスクを評価してカットオフ値以上の人に介入する方向で検討中だ。

 毎年検診を受けて5年間で要精検と言われなかった人が大腿骨近位部で骨粗しょう症みつかることがある。こういうことが広がると不信感にもつながる。このため、簡易骨密度測定よりFRAXにしようという意見が出ている。

 もう一つ、日本でも骨粗しょう症リエゾンサービスがスタートした。このサービスは2次骨折予防だけでなく、1次骨折予防も入ってくる。骨折していない患者の掘り起こしも行う。ナースだけでなく、薬剤師などいろんな職種の人を取り込んでいる。最新の数で骨粗しょう症マネジャーは3057人いる。認定医も1319人。

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◆ 予防のためにすべきこと

 骨粗しょう症・骨折の予防のためにすべきことは、食事の指導、運動の指導、環境がある。環境については、バリアフリーに近いような指導がされることがあるが、数年前にイギリスのナーシングホームから予想外の結果が発表されている。

 完全バリアフリーにすると2~3年後から骨折が増えた。ある程度動ける人が入所している施設で、全面バリアフリーにしたら転倒が増えた。段差があると必ず乗り越える。足を持ち上げる、これが一様になくなると転倒が増える可能性がある。軽いバリアーは設けておいたほうがいい患者も少なからず存在する可能性がある。