最新治療情報①

地域における骨粗しょう症とロコモティブシンドロームの評価と対策の重要性と具体策

NPO法人高齢者運動器疾患研究所
医療法人社団愛友会伊奈病院整形外科

石橋 英明 氏
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 石橋氏は、NPO法人「高齢者運動器疾患研究所」を15年前に設立し、「高齢期の健康はずっと歩くことができ、動けることが重要だ」との考えから、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の対策や、骨折予防の臨床研究や啓発に取り組んでいる。

◆ 骨・関節疾患は要支援・要介護の主要因

 要支援・要介護になる原因としては、骨・関節疾患が24・6%で4人に1人の割合を占め、認知症の18・0%、脳血管疾患の16・6%を上回る。骨粗しょう症は骨強度(骨密度および骨質)の低下により骨折しやすくなった状態のことであり、推定患者数は約1280万人、このうち女性は約900万人とされる。

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◆ 骨粗しょう症の診断基準

 骨粗しょう症に多い骨折は、脊椎圧迫骨折や大腿骨近位部骨折、上腕骨近位部骨折などだ。このうち、大腿骨近位部骨折はほぼ全ての例で手術が必要とされ、治療やリハビリテーションが順調に進んでも要支援・要介護になる確率が高い。こうした骨粗しょう症性骨折において、女性の発症率は男性の約4倍と高い。これらの部位を一度骨折すると、次の骨折の発生率が約2倍に高まる点にも注意する必要がある。

   骨粗しょう症の診断基準は(1)脊椎圧迫骨折または大腿骨近位部骨折がある(2)その他の骨粗しょう症性骨折があり、骨密度が80%未満(3)骨粗しょう症性骨折はないが、骨密度が若年成人の70%以下―などに該当した場合とされている。

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◆ 骨折リスクを予測

 自らの骨折リスクを知るためには、世界保健機関(WHO)が世界各国の疫学データを基に考案したフラックス(FRAX)という評価ツールがある。幾つかの項目を入力することで、今後の10年間のリスクを算出する。もちろん、日本語にも対応している。

 体重と身長に着目した身体的所見も有用だ。体重が軽い人は骨密度が低い。アジア人女性を対象とした大規模な調査の結果からは、年齢から体重を引いた数値が20を超えている場合は骨粗しょう症のリスクが高いと言える。また、閉経後に身長が2センチ以上低くなっていると椎体骨折のリスクは2・8倍に、4センチ以上だと13・5倍にも高まるとされている。 さらに、母親に大腿骨近位部骨折などがあると、娘の骨折リスクは約2倍に高まることもわかっている。

◆ ロコモの自己チェック

 運動器の障害のために移動機能の低下を来した状態であるロコモティブシンドローム(ロコモ)という言葉が、定着しつつある。

 ロコモの予防には習慣的な運動が重要である。ただ、ロコモが進行して、運動機能が低下し過ぎると、運動をすることも、外出さえもできなくなる。そうなる前に、早めのロコモ対策をお勧めする。高齢期の包括的な脆弱化を示すフレイルも、ロコモ対策で防げる可能性がある。

 運動機能の低下に気付くための自己チェックが「ロコモチェック」だ。
(1)片脚立ちで靴下がはけない(2)家の中でつまずいたり、滑ったりする(3)階段を上がるのに手すりが必要(4)家のやや重い仕事が困難(5)2キロ程度の重さの買い物をして持ち帰るのが困難(6)15分くらい続けて歩くことができない(7)横断歩道を青信号で渡りきれない。
 一つでも該当する項目があれば、運動機能が低下しており、ロコモの危険があるとされる。

◆ ロコモ度テストは簡単

 ロコモの判定基準がある。ロコモ度テストだ。そのうち、運動機能を測るものが、「立ち上がりテスト」と「2ステップテスト」だ。

 立ち上がりテストでは、10から40センチの高さの台から片脚または両脚で立ち上がることが可能かどうかを判定する。片脚で40センチの台から立ち上がれなければ、ロコモが始まっているロコモ度1。20センチのところから両脚で立ち上がれなければ、ロコモ度2。ロコモがより進行していることになる。

 2ステップテストは、スタートラインに両足のつま先をそろえて立ち、できるだけ大股で2歩進む。2歩幅(センチ)を身長(同)で割った値が、2ステップ値と言い、この数値が1.・3未満はロコモ度1、1・.1未満ではロコモ度2と判定する。

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◆ ロコモ対策は習慣的な運動を!

 速歩やジョギングなどの有酸素運動や筋力トレーニングなどの運動をする習慣をつけることは重要で、スポーツに親しむことももちろん良い。日本整形外科学会は「ロコトレ」を勧めている。特に、中高年は、(1)下肢の筋力を総合的に鍛えるスクワット(2)体のバランスを改善する片脚立ち(3)立位でかかとを上げ下げする「ヒールレイズ」―の三つが勧められる。

 運動習慣とともに、活動性の高い生活を送ろう。普段から早く歩くことを意識し、エスカレーターではなく、階段を使う。食事面は、バランス良く十分に摂り、特に骨や筋肉にたんぱく質、カルシウム、ビタミンD、Kは重要だ。