◇企業をパートナーに
パネルディスカッションでコメンテーターを務めたのは、ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表の大和田順子氏だ。「都市と農村との交流、企業と地域をつなぐことが私の仕事だ」と言い、年に150日間ほど地方を訪れる。手掛けた一例が、山梨県北杜市で耕作放棄地を再生したNPO法人「えがおつなげて」と大手不動産会社との連携だ。この会社から社会的な貢献をする活動(CSR)をしたいと相談を受けた大和田氏が推薦したのが、「えがおつなげて」だった。連携の成果として純米酒「丸の内」を、17年には純米焼酎「大手町」が登場した。「あと5年くらいで、ぶどう酒『有楽町』なんていうものが出来るのではないか」と期待する。 大和田氏は一つの重要な視点として、地域資源の質を担保する認証制度として世界農業遺産や日本農業遺産を挙げた。現在、日本で世界農業遺産に認定されているのは8地域。廣畑氏が紹介した「みなべ・田辺の梅システム」のほか、新潟県佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」、石川県能登地域の「能登の里山・里海」、静岡県掛川市周辺地域の「静岡の茶草場農法」などだ。
中でも大和田氏が注目するのが「宮崎県高千穂郷・椎葉山地域」だ。同地域の日之影町は県の中で最も消滅可能性が高いともいわれる。しかし、大和田氏は「棚田百選に選ばれた棚田があり、森林セラピーがあり、わら細工や竹細工がある」と、可能性に期待する。例えば、昔からあるありのままの風景を楽しみながら歩くフットパスのコースを造るといったアイデアもある。
同町に小規模な水力発電所が建設され、電力を買う福岡県の企業が「地域活性化の手伝いをしたい」と、伝えてきたという。大和田氏は「どこの地域でもできるので、企業を一つのパートナーとして考えてほしい」と強調した。