第1部の冒頭、基調講演した観光庁長官の田村明比古氏は「訪日外国人旅行者(インバウンド)数は堅調な伸びを示し、消費も回復基調にあるが、いろいろな課題が出てきた」と語った。2年ごとに訪日外国人が旅行中に最も困ったことを調査している。2014年に1位だったWi-Fi環境は16年には2位に下がり、「施設などのスタッフとコミュニケーションが取れない」がトップに。3位は「多言語表示の少なさ」、4位は「公共交通の利用」だった。田村氏は「中国人も含め全体として個人客が増えたことによる。食事も自分で注文する。美術館に行けば、解説も自分で一生懸命読まなければならない」と指摘した。
政府は20年までに世界水準のDMOを100地域につくるという目標を掲げている。現在、157の候補法人が登録されているが、「候補」という文字を外すためには課題も多い。海外の先進的な事例としてよく紹介されるのが、米カリフォルニア州ナパ郡とスイスのツェルマット観光局だ。ナパはワイナリーツアーなどさまざまな商品を企画し、観光を産業として発展させている。ツェルマットでは、地域住民が主体となった組織(ブルガーゲマインデ)が観光戦略に積極的に参画している。
田村氏は「多様な関係者を巻き込み、きちんとデータを取る。戦略的なプロモーションと人材の育成。そして安定的な運営資金の確保について検討する必要がある」とした上で、飛騨高山コンベンション協会(岐阜県)や八ケ岳ツーリズムマネジメント(山梨、長野県)、そらの郷(徳島県)などの例を挙げ、DMOの将来に強い期待を示した。