事例報告②

「首都直下地震を想定した新宿区の対策- 災害情報の視点からみた減災・防災対策への取組み -」

新宿区 危機管理担当部長

平井 光雄氏

◇帰宅困難者、外国人が課題

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 日本最大の繁華街、歌舞伎町を抱える新宿区。同区危機管理担当部長の平井光雄氏は「新宿は歌舞伎町や西口の高層ビル街だけでなく、多彩な顔を持っている」と切り出し、同区の特殊性に触れた。新宿駅周辺には超高層ビルが立ち並び、飲食店など集中する。高田馬場や早稲田という学生街もあり、大久保では多くの外国人が生活している。1日の乗降客数が350万人を超える新宿駅はじめ、主要駅も多い。

 人口は約33万7000人だが、昼間は約75万人に膨れ上がる。最も悩ましい課題の一つが帰宅困難者対策だ。東日本大震災では、JR、私鉄、地下鉄が運行を停止したことによって主要駅で多数の滞留者が発生し、大混乱に陥った。幹線道路には徒歩で帰る人たちで大混雑し、車道まで人があふれた。

 平井氏は当日の区の対応を「午後3時に災害対策本部を設置したが、時系列でたどると帰宅困難者、帰宅困難者、帰宅困難者…。ほとんど帰宅困難者対策に追われたのが、東日本大震災だった」と振り返った。

 新宿区は、大災害時の応急活動を支える情報の収集・伝達機能の強化に力を入れている。応急活動をする側では、移動系行政防災無線254局、衛星電話28台、大量のデータをやりとりする災害情報システムを備える。情報を伝える機能では、同報系行政防災無線屋外拡声子(防災スピーカー)102局を配備した。平井氏は「防災スピーカーだけではなかなか伝わらない。エリアメール、フェイスブック、ツイッター、ケーブルテレビなど多様なツールで情報を伝達する」と強調した。

 新宿区には約4万2000人の外国人が暮らしていることに加え、訪れる外国人客も多い。こうした外国人に対応するため、大学や日本語学校、NPO、商店街などで構成する多文化防災ネットワークを運営。「区が発信する情報から多言語化する情報を選定し、防災ネットワークに翻訳を依頼する。翻訳された情報を外国版SNSで発信する仕組みづくりに取り組んでいる」と言う。

 帰宅困難者対策として新宿駅周辺防災対策協議会が昨年、策定したのが「新宿ルール」だ。内容は、①組織は組織で対応する②地域が連携して対応する③公的機関が地域を支える―とシンプル。ルールを実践するための行動指針も、①むやみに移動しない②現地本部を中心に連携する③地域で傷病者に対応する―の3点だ。これを紹介した上で平井氏は「情報を迅速、的確に伝えるためのツール、仕組みをどうするか。住民や区を訪れる人たちに、災害時にどのように行動するかを分かりやすく伝える方法をどうするかが課題だ」と結んだ。

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プログラム

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「首都圏の地震防災の現状と課題」

内閣府
政策統括官(防災担当)付
参事官(調査・企画担当)

廣瀬 昌由氏
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「首都直下を想定した神奈川県の対策」

神奈川県
安全防災局
安全防災部長

杉原 英和氏
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「ICTを活用した災害対策におけるNTT東日本の取り組み」

東日本電信電話株式会社
ビジネス&オフィス営業推進本部
公共営業部 担当課長

伴野 淳志氏
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「首都直下地震で自治体に求められる今後の防災対策」

東京大学大学院情報学環
総合防災情報研究センター長 教授

田中 淳氏
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トークセッション「どう進めるか、首都直下地震への備え」

【パネラー】
危機管理教育研究所 代表
(益城町防災アドバイザー)

国崎 信江氏など
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