◇命を最優先に

神奈川県は都心南部直下地震が起きた場合、建物の全壊6万4500棟、半壊22万1250棟、死者2990人、重傷者1万3390人との被害を想定する。東日本大震災を受けて県は2013年4月、地震災害対策条例を制定した。同県安全防災局安全防災部長の杉原英和氏は条例の基本理念について「命を最優先する。それを自らの安全を自ら守る『自助』、連携・協力して助け合う『共助』、県や市町村、国が行う『公助』でやっていく」と語った。
神奈川県には海や山があり、政令都市3市を抱えることから人口も集積されている。石油コンビナートも立地されている。杉原氏は「こういった自然的・社会的条件を考慮しながら地震対策を進める。さらに、男女双方の視点、要配慮者の視点、観光客、旅行者の視点など多様な視点から考えていく」と、条例のポイントを説明した。
県は昨年、地震防災戦略を決定した。想定しているのは、1923年の関東大震災の再来である大正型関東地震だ。死者数の半減を目標に、30の重点施策を掲げる。「揺れや液状化、急傾斜地崩壊、津波、火災といった原因別に対策を考える作業をした」と杉原氏。例えば、地震の揺れによる死者を減らすためには建物の耐震化や室内の家具の固定化が必要だ。同時に「揺れたら安全な所に身を隠し、頭を守る『シェイクアウト』(一斉防災行動訓練)を打ち出した」と言う。昨年の参加登録者数の実績は目標の160万人を上回る約175万人で、国内最大規模だ。
大規模災害時には、県が市町村に情報を収集する先遣隊や連絡員を派遣する。連絡員は衛星電話を携行。また、県庁の主幹以上の職員はiPad(アイパッド)を持たされている。杉原氏はこうした取り組みを紹介した上で「『オール神奈川』で防災に当たる」と強調した。

