地域情報化アドバイザーインタビュー

クローズアップ自治体のIoTやAI導入、「スマホにマイナンバーで一気に進む」
実積中央大教授

地域情報化アドバイザー実積中央大教授

本格的な人口減少時代が目の前に迫っている今、人手に変わる手足や目となるIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を地方自治体で活用していくことは避けられないが、一方で導入のハードルはまだまだ高いと感じる人も多いはずだ。中央大学総合政策学部の実積寿也教授は「大手システムベンダーに依存しなくても、若い職員が業務で使えるアプリを自作する時代。自治体業務はこれから大きく変わっていく」と語る。
 1980年代後半から情報通信政策に関わってきた実積教授は、平成に次ぐ時代について「インフラや端末の制約を考えなくてもいい時代。どんどん高性能になるスマホやIoT端末が身の回りに溢れ、それらをどう使うかが問われる時代になる」という。
 利活用を支える通信ネットワークについても「農業利用や災害対策なども考えると市街地以外にも展開が必要だが、それ単独で整備するとコストばかりかさむ。公的利用のネットワークを平時には観光などに開放し、そこから収入を得てコストを賄うという発想で進めれば、面的カバーが加速できる」と語る。
 11月から本格運用が始まった日本独自の測位衛星「みちびき」を例に挙げ、「手元の端末で細かい位置情報を把握し、それを活用するアプリを作成すれば、土地改良や道路工事関係の業務は大いに自動化・効率化できるはず」と指摘。
 特に変わっていくのが窓口業務といい、「ますます高度化するスマホの個人認証システムを十分に活用すれば、市民が役所の窓口を訪れてやらなければならないことの多くが自宅や職場、外出先から出来るようになり、一気に業務の効率化が進む」と言い切る。
◇「ベータ版」意識で、積極的に試行錯誤を
 総務省「ICT地域活性化大賞2017」優秀賞を受賞した北海道森町のひぐま出没情報「ひぐまっぷ」は、若手職員がアプリを自作し、周辺の20市町村が活用している。実積教授は「若手職員が凄い。こういうアプリがあるといいよねというと翌日作ってくるパワーがある。森町周辺自治体のように、他所のアプリを借りてくるという発想も大事」という。
 インターネットの世界では、完成品ではない「ベータ版」が許容されていることを例に挙げ、「初めから100%でないとダメというのではなく、トライアルを許して試行錯誤することが大事」と語る。実積教授は「現状は、紙を前提にした制度のまま、ベンダーに業務の一部の情報化を発注して導入している。既存の業務プロセスを維持したままで最適化するのには限界がある。自治体業務をゼロベースで考え直して設計したら何が出来るかを考えて欲しい」と意識改革を求める。
 課題となる人材不足についても、アイデアを出し合ってプログラムなどを開発するハッカソンに集まるIT技術者らの中に、「実験的に作って終わりではなく、実際に試せないかと考える人が増えているので解決への道筋が見えつつある」、「自治体業務のイノベーティブな改善に関心を持つ人は少なくない」という。
 実積教授は「法律や制度を急に変えるのは難しい。アプリの開発などはベータ版意識で、『もし失敗しても現状の紙ベースのやり方でバックアップ可能』と開き直ってチャレンジできるかどうか。失敗は許されないと言う行政の文化を変えることが求められる。必要な情報は積極的にオープンにして、民間からのアイデアも呼び込みつつ、果敢なトライアルを行い、行政として最後まで守るべきものは何かを考えて欲しい」と訴える。
 総務省の地域情報化アドバイザーが集まった会合では、理想のICT自治体コンテストなどというアイデアも出されているという。「社会がつながると、人間のつながりが変わる。イノベーターは人口の数%以下かもしれないが、つながることで、彼らのビジョンを全員で共有できる。地域課題についても、先に解決している地域とつながることで対処が容易になる」と語る。
 実積教授は「20年前には、プラスチックの小さな板みたいなものが電話の機能を果たすようになるとは誰も考えていなかった。技術進歩は現状をすべて変えるポテンシャルがあり、常識外れのようなことが将来は普通になるかもしれない。法律などの制約を考えずに、新しい技術を限界まで活用すれば、自治体の業務はどうなるのかという夢を描いて欲しい。自由な発想を解き放ち、面白がって新しいものにチャレンジして欲しい」とエールを送っている。(了)

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